<食卓ものがたり>甘さ格別 高原の「妖精」 白いトウモロコシ(栃木県那須町) 

2022年8月6日 07時17分

辻岡充さんが丹精込めて育てた白いトウモロコシ=栃木県那須町で

 トウモロコシの皮をむくと、つやつやの真っ白な粒が整然と並んでいた。「生のまま食べられますよ」。栃木県那須(なす)町の農家辻岡充(みつる)さん(52)は笑う。果物のような甘さでみずみずしい。シャキシャキとした食感の粒は皮が薄く、歯にも挟まらない。
 辻岡さんの白いトウモロコシの畑は計約三ヘクタール。那須高原の標高四〇〇〜六〇〇メートルに点在し、七月中旬から収穫が始まる。一日の寒暖差が大きい高原では、光合成でためた糖質を夜に過剰消費しないため、糖度が上がりやすい。酪農地帯なので良質な堆肥も豊富だ。
 数多い品種の中でも、甘みの強い「雪の妖精」がメイン。糖度はメロンを上回る一八度以上で、八月の盛夏は二〇度以上の甘さになる。
 苦労も多い。妻の明美さん(52)と結婚後、周囲の反対を押し切り、脱サラしてUターン就農した。直後に東日本大震災が発生。風評被害にも遭った。
 動物もおいしいものに目がない。熊に一晩で四千〜五千本食べられたことも。イノシシも多い。夜中に二時間おきで畑に出て花火を鳴らした。電気柵を張った今も、小動物や鳥による被害は絶えない。近くの畑で黄色いトウモロコシを栽培していると、交雑して白くなくなるので植え付けの場所や時期にも気を使う。
 「毎年チャレンジ。楽しいというより夢中です」。苗は標高の低い畑から順に植え付け、収穫時期をずらす。常に新鮮なものを出荷するための工夫だ。朝採りにこだわり、夜明けを待って収穫。あまり栽培されておらず珍しい白いトウモロコシは「ニーズがあるはず」と信じ、努力を重ねた。
 二〇一六年、町経済四団体推進連絡協議会の「那須ブランド」に認定。地元のレストランやホテルからの引き合いも多く、「栽培面積を年々増やしています」。農業を通した人の輪の広がりを実感している。
 文・写真 砂本紅年

◆買う

 辻岡さんの白いトウモロコシは、那須町内のスーパーや東北自動車道「那須高原サービスエリア」などで販売している=写真。オンライン直売所「食べチョク」でも購入できる(「食べチョク」で検索)。収穫当日なら生食も可能。翌日以降はラップに包み、レンジで数十秒温めるか、熱湯で3分ゆでる。「温めた場合は、いったん冷蔵庫で冷やした方が甘みが感じられる」と辻岡さん。「バターで炒めてもおいしい」。レストランやホテルでは、アイスクリームや冷製スープの素材にも使う。

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