<書く人>「女性の友情」を全肯定 『一心同体だった』 作家・山内マリコさん(41) 

2022年8月7日 07時00分

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 デビュー十周年の節目に刊行した物語で、女性同士の友情を描いた。きっかけは、カフェで見かけた二人組の女性だった。聞こえてきたのは、友達になりかけの、たどたどしい会話。「友達と出会った当初の雰囲気を思い出したんです。今までの友達全部を俯瞰(ふかん)する、ロンド形式の連作短編はどうかなと浮かんで」
 一九九〇年から二〇二〇年を順に追い、全八話が展開する。主人公は十歳から四十歳まで、住む場所も立場も異なる女性たちだ。第一話の登場人物が第二話の主人公になって…を繰り返し、最終的に円環をなす。一人の女性だけで書いた方が「はるかに手間がかからない」と苦笑するが、「価値観の異なる女性たちが友達の輪でつながっていく。全員で物語を編むことで、あらゆる年齢の、あらゆるタイプの友情を肯定したかった」と話す。
 授業でペアになるとき、選ばれるのを待つ小学四年の千紗。おまじないで親友との擦れ違いを解消しようとする中学二年の裕子。大阪芸大で映像を学んだ自身の経験を基にしたのは、二十歳の遥だ。映画研に入るが、暗黙のうちに決まっていた男女の役割によって夢はのみ込まれていく。それぞれ流行曲やグッズをちりばめ、一人称の語りや手紙の形で心の機微を描いた。
 「自分がこういう時代を生きてきたと、ちゃんと残したい」とつづったストーリーは女性の平成三十年史でもある。あらためて振り返れば「女性差別に鈍感な世代だった」と実感した。「家庭でも学校でも、自分が差別された存在だなんて一切気付かず生きてきた」
 最終話では結婚と離婚、妊娠を巡り、フェミニズムに目覚めた絵里が語り手。ツイッターの百四十字内の形式を採り、鋭い指摘を繰り出す。<選ばれるのを待つ側は、弱い><女らしいって、つまり便利そうってことだもんね>。交流サイト(SNS)を模したのは「世代論として描くべきだ、と。違和感とか、ふたをしてきた気持ちを他者と共有することで横の連帯ができ、自分の言葉を獲得した人が多い」と説明する。
 デビュー前、女性の友情を書きたいと編集者に伝えたことがあった。返ってきたのは「女性作家は恋愛小説を書いて」との言葉。ずっと疑問が残った。ここ十年ほどで性別と分野のひも付けは薄まってきたと感じている。書きたいことを書けたことが「良かった。集大成」と言う。光文社・一九八〇円。 (世古紘子)

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