JR水郡線の赤字で存続危機「地元には死活問題」 観光客が利用 バス転換に理解も

2022年8月6日 07時47分

水郡線の常陸大子駅。レトロな駅舎は観光客にも人気だ=大子町で

 JR東日本が七月末に公表した地方路線の収支データで、厳しい経営状況が明らかになった茨城県の水郡線。常陸大宮以北の赤字額は年間十数億円に達していることが分かり、存続を求める沿線住民や利用者の間に危機感が広がっている。一方、現地を歩くと、新しい交通機関への転換に理解を示す声も聞かれた。(出来田敬司)
 「鉄道があるかないかは地元にとって死活問題。JRは、いくら経営が厳しいといっても利益を考えるだけではだめ」。常陸大子駅のそばにある「大金酒店」の店主、大金利重さん(84)はそう言い切る。
 一九六〇年代には鉄道を利用する帰省客が駅前にあふれ、店で日本酒を買い求めていった。今は列車に自転車を持ち込める「サイクルトレイン」の乗客が立ち寄り、ビールを購入する。大金さんは「水郡線は大事。大子とは切っても切り離せない」と訴える。
 観光客にとっても水郡線は欠かせないようだ。駅前のベンチで涼んでいた日立市の男性会社員(41)は「列車に乗って高架橋から見る景色がいい。町を歩くにもとても便利だし」。
 男性は毎月一回程度、常磐線と水郡線を乗り継ぎ町内を散策し、袋田の滝や渓谷の紅葉などを楽しんでいるという。「バス旅もいいが、風情を感じられるのが鉄道のいいところ」と愛着を語った。
 水郡線は水戸と郡山を結ぶ非電化路線。久慈川の流れに沿い、風光明媚(めいび)な景色が広がることから「奥久慈清流ライン」の愛称を持つ。二〇一九年十月の台風19号の被害で大子町内の橋が崩落して一部不通となったが、沿線住民による早期復旧の要望が実り、工事を前倒しして二一年三月に全線再開した。
 今回、JR東が公開したのは、一九年度に一キロ当たりの一日平均乗客数(輸送密度)が二千人に満たない地方路線(三十五路線六十六区間)の収支データだ。新型コロナウイルス禍で厳しい経営が続く中、「持続可能な交通体系に向け積極的に議論をさせていただく」として、初めて公表に踏み切った。
 水郡線では、常陸大宮−常陸大子(三二・二キロ)が十二億一千万円、常陸大子−磐城塙(はなわ)(二五・七キロ)が五億二百万円の赤字。特に輸送密度が低い常陸大子−磐城塙は、百円の収入を得るために五千三十三円もの費用がかかっている。
 今回の収支公表について、JR東は廃線などに直結するものではないとしている。とはいえ、廃線の可能性も念頭に現実的な代替策を模索すべきだとの声は、沿線住民からも上がっている。
 常陸大子駅前で米穀店を経営する岡崎俊之さん(52)は「町の人口が減っているし、鉄道の利用が少なくなるのは致し方ない。高齢者や高校生の足の確保は必要だが、私たちの移動は自家用車が普通だね」。
 袋田駅近くで鮮魚店を営む斉藤正義さん(66)も「保線のために大がかりな工事が続けられている。お金を掛けるより、バスに転換するなどして移動手段を確保した方がいいのでは」と話した。

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