岸本聡子・杉並区長に聞いた 「政策を見てもらう機会を積極的につくるのが政治家の使命」【動画】

2022年8月7日 06時00分
<杉並から~始動 岸本区政②民主主義>
 6月の東京都杉並区長選で現職を破り、初当選した岸本聡子区長。選挙戦では区民と議論を重ね、自らの政策を更新していくことで支持を広げた。本紙のインタビューでは、住民が地域の政治に関与するこうした動きが広がれば「民主主義の危機を乗り越えるアクションになる」と強調した。今回のテーマは「民主主義」。

 きしもと・さとこ 1974年東京都生まれ。2003年からオランダに拠点を置く政策シンクタンクNGOで、各国の公共サービス民営化の実態などを調査。今年6月の杉並区長選で、区民団体の出馬要請を受けて立候補し、住民と対話しながら公約をバージョンアップする選挙戦を展開。187票差で現職を破り、7月11日に杉並初の女性区長に就任した。

選挙戦で市民との議論を重視した杉並区の岸本聡子区長(右)。初登庁では多くの市民の出迎えを受けた=7月11日撮影

◆「時代に応じたアップデートができていない」

 区長としてではなく、欧州の非政府組織(NGO)で長く働き、外側から日本を見てきた一市民として思うのは、政権交代がない国というのは珍しいということ。欧州では、中道左派と中道右派が政権交代を繰り返す傾向があります。
 両者は「選挙で国民に審査される」という意識が強く、選挙に向けて政策を磨きます。政策ごとに考え方が違っても、ジェンダーや気候変動など、若者らが重視する新しい課題に応えなければいけないという緊張感は共通しています。党が時代の要請を政策に反映し、時代とともに変わるというプロセスがあるのです。
 ここで前提になるのは、国民が投票に行くということ。国民の間には「投票に行けば変わる」という政治への期待が少なからずあり、政治不信が高まれば、街頭でデモなどの形で現れます。日本では政治不信が「選挙に行かない」という形で現れています。現状を変えたくない為政者には一番都合のよい状態です。政権交代もあったとはいえ、戦後、ほぼ同じ政党が統治し、時代に応じたアップデートができていないことには、危機感を覚えます。

◆「市民が関われば政治が変わる」

区長選で街頭演説をする岸本さん。「候補者は公開討論会に出て政策を語り、自身の強み、弱味も見てもらうべき」と語る=6月12日撮影

 「議論しない」という政治文化も理解できません。候補者は演説やチラシ配りだけでなく、積極的に公開討論会に出て政策を語り、質疑を通して自身の強み・弱みを見てもらうべきです。「有権者は政策を見ていない」という考え方はおごり。政策を見てもらう機会を積極的につくるのが、政治に関わる者の使命です。
 国民が主権者意識を取り戻す上で注目してほしいのが、やはり地方政治です。これだけ国が変わらない中で、主権者意識を持てと言われても厳しいものがあります。地方のことなら、選挙や地域の活動を通じ、街づくりや福祉、学校、公共サービスなど身近なものが変わる可能性があります。
 私は市民グループと政策協定を結ぶ形で(区長選の)候補者となり、選挙戦を通じ、より広い市民層との議論を通して政策をアップデートさせました。市民が関われば政治が変わるということを示したのが、今回の区長選だったと思います。地域の活動が、交流サイト(SNS)によって、今まで選挙などに関わらなかった個人に届き、緩やかにつながった。
 これが杉並だけで終わってはいけない。他の地域でも「やってみよう」と思う人が出てきてほしい。それが、民主主義の危機を乗り越えるための一つのアクションになると思います。
<杉並から~始動 岸本区政>
 東京都杉並区の岸本聡子区長に単独インタビューし、区政刷新から民主主義の再生まで幅広く話を聞いた。
聞く力 市民参加型予算「実現可能だし面白い。やって絶対損はない」

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