<ひと物語>インド文化が生きがい カレー店経営・緒方いずみさん

2022年8月7日 07時09分

カレー店を営みつつ、「ナマステ川越」改め「ナマステ飯能」を主催する緒方いずみさん=飯能市双柳で

 埼玉県内に住む緒方いずみさん(49)は二年前の冬、飯能市役所近くにカレー専門店「トルカリジュッティー」を開いた。旬の野菜や豆などをスパイスを組み合わせて炒め、一皿に華やかに盛り付ける。かつて暮らしたバングラデシュやネパールの一般家庭を訪ねて覚えた自慢の料理だ。
 小学生だった約四十年前、インド圏の文化と出合った。丸広百貨店川越店のエスニック催事展でインド製木彫り人形を目にし、「心をつかまれてしまった」と衝動買い。中学生のころには深夜ラジオから流れるインドの古典音楽のラーガに魅了され、「将来、必ずこの国に行く」と決意。高校時代はインド哲学書や芸術書を読みあさり、二十歳のとき、アルバイトの貯金をはたいて友達と二人で念願のインドへ旅立った。
 その旅路で「英語ができないことを忘れていた」と気付いた緒方さん。到着後の入管では会話が成り立たず、強制送還の危機に。「航空券の帰国予定日の欄に『今日の日付を書け』と言われ、大泣きして拒みました。何とか送還は免れた」。その時に粘らなかったら、今の緒方さんはいない。
 以後はインド国内やネパールを放浪。市井の人たちと交流するうちに、ヒンディー語やベンガル語を身に付けていった。ビザが期限を迎えるといったん帰国したが、アルバイトで資金がたまると再びインドへ。三回目の旅では、当時ボランティアでコルカタを訪れていた現在の夫と知り合うことになる。結婚後、国際協力機関の職に就いた夫に付き添い、バングラデシュとネパールで約八年を過ごした。
 帰国後は再び県内に居を構え、ネパール雑貨を扱うオンラインショップを開店。ヒンディー語でサンダルを意味する「ジュッティー」を店名にしたが、期待したほど売れずに頭を抱える日々も。ネパールで作ってもらった店舗看板を生かそうと、心機一転して飯能の間借りキッチンに出店すると、個性的なカレーがじわじわと人気が高まり、ついに店舗を構えた。
 「バングラの家庭料理は質素だけど味わい深い。ネパール料理も、インドと全く違うスパイスの使い方がおもしろい」と語る緒方さん。その足跡をたどるような料理が、現在の店で味わえる。
 料理より長い年月、生きがいとしてきたのがインドの芸術や文化風俗。今月二十日、自身が主催者となるイベント「ナマステ飯能」を飯能市内で開く。
 弦楽器シタール奏者の石濱匡雄さん、バラタナティヤム舞踊家の富安カナメさんら各分野の第一人者を集めるほか、インドに詳しいライターや映画監督のトークショーも充実する。「コロナ禍が続く今、日本にいながら海外文化に触れてほしい」と緒方さん。当日は料理も用意して観客を迎える。(武藤康弘)
<おがた・いずみ> 1973年、志木市生まれ。鶴ケ島市や東京都青梅市で間借りキッチンを出店し、2020年1月にジュッティー開店。今月20日開催のイベントは「ナマステ川越」として準備したが、諸事情により「ナマステ飯能」に変更、飯能市南の竹寺で開く。入場料は大人5000円(食事付き、小学生は半額)。入場券予約はチケットサイト「TIGET」から。

関連キーワード


おすすめ情報

埼玉の新着

記事一覧