京アニ放火殺人 30以上作品携わる石田敦志さん 父「志半ば、忘れないで」

2019年8月28日 02時00分

記者会見でコメントを読み上げる石田敦志さんの父・基志さん=京都府警伏見署で

 努力の末に憧れの職場で働いていた若手、代表作を支えたベテラン。三十五人が亡くなった京都アニメーション放火殺人事件の発生から四十日が経過した二十七日、公表されていなかった犠牲者二十五人の身元が明らかになった。「これからだったのに」。夢の途中にいた息子を奪われた父親は、涙を浮かべて無念さを語り、ファンや関係者らも悲しみを新たにした。 
 「それぞれが名前を持ち、それが三十五分の一で本人たちはいいのかな、というのが偽らざる思い」。事件で亡くなった石田敦志さん(31)の父、基志さん(66)=福岡県=は二十七日、京都府内で会見し、取材に応じた理由を語った。「敦志は親孝行だけをして逝ってしまいました。敦志のことを多くの人に知っていただきたい」。約六十人の報道陣の前で時折涙ぐみ、息子への思いを語った。
 敦志さんは末っ子で、待望の男の子として生まれた。人と争うことが嫌いで、幼い頃から「大きくなったらアニメの仕事がしたい」と夢見ていた。基志さんはアニメーターが恵まれた仕事と思えず、反対したこともある。それでも敦志さんは大学と夜間のアニメ専門学校を両立し、二〇〇九年春、憧れの京都アニメーションに入社した。
 人気アニメ「けいおん!」をはじめ、三十以上の作品にかかわった敦志さんは毎回、テレビの放映時間を父親に電話で知らせ、映画ならチケットを送ってくれた。「エンドロールに石田敦志の名前を見るのが家族の楽しみで、何度も夢と希望を与えてくれました」
 七月十八日、京都アニメーションが放火され多数の犠牲者が出たと知らせを受け、車で福岡から京都に駆け付けたが、六日後、死亡が確認された。「やっと円熟期に差しかかり、彼が本当に表現したかった『自然に、しかも美しい』動画に磨きがかかると楽しみにしていた。人生の過酷さは知っているつもりでしたが、人生にこんなにも理不尽で苦しくて悲しいことがあるとは思ってもみませんでした」
 基志さんは目に涙をため、声を張り上げた。「たった一人の卑劣な犯罪者のために、才能と想像力にあふれた多くの人材が亡くなり、傷ついた。石田敦志というアニメーターがいたということを、どうか、どうか忘れないでください」 (水越直哉)

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