<取材ファイル>デート商法、被害金戻らず 婚活サイトで標的に 裁判では勝訴したが…

2019年8月21日 02時00分

投資話を持ちかけた女性とのLINEでのやりとりを見ながら経緯を話す男性=東京都内で

 「逃げ得は許せない」。婚活サイトで知り合った女性から投資話を持ちかけられ、計八百三十万円の被害を受けた会社員の男性(41)=千葉県在住=は、悔しさを隠せない。好意につけ込んだ「デート商法」の被害は自分だけではなく、男性は投資話に関わった人材派遣会社の関係者に損害賠償を求めて提訴。裁判では勝訴したが、被告側の中心人物は行方が分からず、出資金は取り戻せないままだ。 (福岡範行)
 「お茶でもしませんか」。男性は二〇一三年三月、婚活サイトで女性から誘われ、東京・新宿のカフェで会い、一目ぼれした。
 「付き合っていくなら、真面目に考えてくれないとダメだよね」。女性は三回目の食事のころから投資話をするようになり、その後、勤務先だという人材派遣会社などの社債を購入するよう持ちかけてきた。男性が渋ると「私はやるのに、やらないの?」と機嫌を悪くしたという。
 「私は(男性を)すてきだなって思っていますよ」「未来の結婚式を妄想しながら寝ま~す」。そんな思わせぶりなメールが次々と送られてきた。
 男性は真剣に交際したいと考え、社債を一三年四月~一四年五月、計一千万円分購入した。約束された配当は一五年一月まで月三万~十六万円支払われたが、その後、途絶えた。女性にLINE(ライン)を送っても次第に返信が来なくなり、会えなくなった。
 インターネットで、同様の被害を受けたという別の男性らの書き込みを見つけ、連絡を取ると、同じ女性から勧誘されていたことが分かった。
 「多額の金を失い、自殺したいと話す被害者もいた。闘わなければと思った」。男性は他の被害者と一六年八月、会社の実質経営者らを相手に東京地裁に訴訟を起こした。
 男性らは会社の法人登記から関係者の住所を調べて訪ね歩くなどし、会社の内情を知る元従業員の女性を見つけた。元従業員は東京地裁にメモや陳述書を提出。メモには、三回目に会う際に「一緒に何かできたらいいよね」と投資話を持ちかける手順が書かれていた。陳述書では「デート中にも指示があり、その内容を会社に報告していた」とした。
 被告側は「事業は成功しなかったが、詐欺的な商法とは言い掛かりだ」と反論した。東京地裁は一七年十二月、経営実態がないのに投資を募ったなどとして、被告側に対し、計約八千三百万円の賠償を男性ら原告八人に支払うよう命じた。
 原告代理人を務めた佐藤嘉寅(よしのぶ)弁護士(45)は「組織的に多数の人をだましており、悪質だ。だが、会社の実態がないなど悪質な場合は被害の回収がなかなかできない」と指摘する。
 勝訴判決は確定したが、実質経営者らの居場所がつかめず、男性は被害金を取り戻せていない。「だました側の責任を最後まで追及できる法制度にすべきだ」と怒りをにじませる。

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