朝鮮学校めぐり弁護士に懲戒請求 おとしめた代償 賠償続々

2019年7月30日 02時00分

5月の東京高裁判決後に記者会見する金竜介弁護士(右)ら=東京・霞が関の司法記者クラブで

 朝鮮学校への補助金停止に反対する声明を日弁連などが出したことへ反発する特定のブログの賛同者から二〇一七年、各地の弁護士が計約十三万件もの懲戒請求を受けた問題で、請求を送り付けた人に対する訴訟が各地で続いている。判決の大半は賠償命令で他人を安易におとしめた代償を支払う形になっている。送り付けた人の行為を「人種差別」と厳しく批判した判決もある。
 きっかけは、日弁連や各弁護士会が一六年、朝鮮学校への補助金停止に反対する声明を出したことだった。ブログ「余命三年時事日記」が反発して弁護士会役員らの懲戒請求を呼び掛け、読者らが呼応。ある懲戒請求者によると、書類はブログ側が用意し、対象の弁護士名も記入済みだった。署名、押印して指定された住所に送り返すだけ。「簡単だった」という。
 異様だったのは、声明に関わっていない弁護士も標的にされたことだ。
 「名前だけで狙われた」。金(きん)竜介弁護士=東京都=は約九百六十件の懲戒請求を受けた。仕事内容ではなく出自を理由にした攻撃で、姓から在日コリアンと推測されたと考えられる。「司法は差別と認めるべきだ」と考えて十一件を選び、一人当たり五十五万円の賠償を求めた。
 うち、今年五月の東京高裁判決は「民族的出身に対する差別意識の発現。合理的な理由は全くない」と差別性を認定。六月の東京地裁判決は「人種差別撤廃条約に規定される人種差別に当たる」と条約を初適用した。
 日本も批准する同条約は、ヘイトスピーチを繰り返した「在日特権を許さない市民の会」(在特会)が〇九~一〇年、京都市の朝鮮学校や徳島市の徳島県教職員組合を襲撃した事件などの判決でも引用された。金弁護士の代理人の高橋済(わたる)弁護士は「外国人住民が増える中、条約ではっきりと人種差別と認定した判決は画期的だ」と評価する。
 金弁護士の訴訟で、東京地裁は八件の判決で十一万~五十五万円の賠償を命じた。一方、名古屋地裁判決は懲戒請求を不当と認定したものの「名誉感情は侵害されていない」として棄却。金弁護士は差別と認める判決が出そろうまで裁判を続けるという。
 忘れられないのは、懲戒請求の書類が山のように届いた日のことだと金弁護士は振り返る。請求者の住所は全国に及び、自身の生活圏の居住者も。「バスで隣の人が自分に敵意を持っているかもしれない。顔の見えない無数の人たちに攻撃される恐怖を感じた」
 東京高裁判決は請求者の行為を「確たる根拠もなく弁護士としての活動を萎縮させた」と非難している。金弁護士は「路上でヘイト発言をしたり、実名と住所を堂々と記して懲戒請求したりする差別社会になってしまった。取り締まる法制度が必要だ」と語った。
 他の弁護士が起こした訴訟でも多くで賠償が認められている。

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