プロポフォール12人死亡公表5年 5カ月男児両親 今も納骨できず

2019年6月29日 16時00分

両親の手元に残る、汰一君の写真=東京都内で(池田まみ撮影)

 二〇一四年六月、東京女子医大病院(東京都新宿区)で亡くなった十二人の子どもに、鎮静剤「プロポフォール」が投与されていた実態が明らかになった。公表から五年。十二人のうちの一人で、生後五カ月で世を去った汰一(たいち)君の両親の元に、病院側から謝罪の言葉はない。気持ちに区切りがつかない両親は、今も小さな骨つぼを納骨できないでいる。 (木原育子)
 「医療に隠し事は必要なのか。正直であってほしいのに、裏切られた気持ちでいっぱいです」。両親は憤り、こう願う。「命に誠実な医療であってほしい」
 汰一君は〇九年八月に生まれた。絵美さん(45)=東京都、仮名=にとって第二子で長男。だが、直後に心臓病の疑いがあるとして、東京女子医大病院の集中治療室(ICU)に緊急搬送された。
 十月に手術したが、翌一〇年一月、手の施しようがないことを病院から告げられた。「寂しい思いをさせないよう、せめて私の胸の中で逝かせてやりたい」。絵美さんは、生まれて初めてチューブが外れた汰一君を一生分抱き締めて、旅立たせた。
 四年半の月日が流れた一四年六月、汰一君の納骨を考え始めたころだった。病院が、五年間でプロポフォールを投与した十五歳未満の六十三人のうち十二人が亡くなり、十一人は使用禁止に該当する子どもだったと公表した。その年の二月に、プロポフォールを投与した男児が亡くなったことから、病院側が調べた。
 「汰一も…」。報道を目にした父、智紀さん(46)=仮名=の予感は的中。病院に問い合わせると、ICUで治療中の七週間にわたり、プロポフォールが投与されていた事実が分かった。亡くなった当時は説明がなかった。
 両親は昨年六月、プロポフォールの長期間投与による副作用で感染症になり死亡したとして、大学側に七千百万円の賠償を求め、東京地裁に提訴した。二人は静かに語る。「天国で十二人の子どもたちが団結しているはず。病院には真実を語ってもらいたい」
 東京女子医大は取材に「二度と同様の事故を起こさぬよう誓い、より安全で、より良い医療を行うよう日々の取り組みを進めております」とコメントした。

◆東京女子医大への捜査続く

 プロポフォールを巡っては2014年2月、当時2歳10カ月の孝祐(こうすけ)君=埼玉県=が、東京女子医大病院の集中治療室で人工呼吸中、成人の許容量の2.7倍を投与されて亡くなった。リンパ管腫の手術から3日後だった。この事故をきっかけに、病院が調査に乗り出した。
 両親は1年後、病院側を告訴。業務上過失致死の疑いで、警視庁が捜査を続けている。
 プロポフォールは手術時の全身麻酔や術後管理時の鎮静に使われるが、ICUで人工呼吸中の子どもへの使用は禁じられている。海外で子どもの死亡事例があったことを受け、厚生労働省が01年に通達を出した。だが、法的拘束力はなく、効果が出るのが早いことなどから、医師の裁量で使われることもあった。
 14年当時の日本集中治療医学会の全国調査では、人工呼吸器を付けた子どもにプロポフォールを使用したICUは2割を占めた。

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