臍帯血 きょうだいからも 脳性まひ患者ら、早期実現求め署名活動

2019年6月28日 16時00分

吉田さんに体を支えられ、楽しそうに歩く長女=東京都新宿区で

 へその緒などに残る臍帯血(さいたいけつ)を使って脳機能を改善させる再生医療の推進を願い、脳性まひの患者家族らが署名活動を展開している。国内では本人の臍帯血を使う研究が始まった段階だが、海外ではきょうだいや第三者の臍帯血を使う研究も進む。家族らは治療の可能性を広げる一歩として、きょうだいからの投与を求めている。 (中村真暁)
 東京都新宿区の吉田友里さん(38)は、公園で歩こうと足を前に出す長女(8つ)の体を優しく支えた。普段はバギーや車いすだが、こうして「歩く」ことが大好きだ。「できることが増えれば、本人もストレスを感じなくなると思うんです」
 長女は出産時にトラブルが重なり、脳性まひになった。四歳ごろまでは鼻から栄養剤を摂取し、今は少しずつミキサー食も食べられるように。生活全般に介助が必要だが、名前を呼べば返事し、抱っこすればブランコを楽しむ。成長や意欲を日々感じ、「長女ともっとコミュニケーションを取りたい。この子が意思を伝えられるようになれば、私の死後も安心」と考える。
 臍帯血投与による再生医療を知ったのは、長女が一歳の時。海外の治療で脳性まひの子どもが回復するのをテレビ報道で見て衝撃を受けた。長女の臍帯血は既になかったが、米国などできょうだいの臍帯血で臨床試験が始まったと聞き、後に生まれた長男(1つ)の臍帯血を民間バンクに預けた。
 国内では大阪市立大などの研究チームが本人の臍帯血での治療の研究を行っている。脳障害のある新生児六人に本人の臍帯血を三回に分けて点滴で投与すると、全員が人工呼吸が必要なくなるまで改善した。さらに対象人数を増やし、検証している。
 しかし、きょうだいや他人の臍帯血での研究にはまだ遠い。同大の新宅治夫特任教授は「本人の臍帯血による安全性や治療効果の確認に数年単位で時間がかかり、きょうだいはその後。拒絶反応が起きる可能性もあり、研究を認める国の審査も厳重だ」と説明する。
 今年二月、治療の実現を願う人々が「さい帯血による再生医療推進全国ネット」を発足させ、吉田さんは関東支部を設立。全国ネットはきょうだいの臍帯血投与の早期実現を国に求める署名活動を始めた。

後藤道雄さん

 代表の後藤道雄さん(68)=沖縄県=は、「臍帯血の有用性を広く知らせることが必要」と話す。臍帯血で治療できる可能性は、脳性まひだけでなく自閉症などにもあるが、二〇一七年は約九十四万人の新生児が生まれたのに対し、厚生労働省によると、同年度に新たに民間バンクで保管された臍帯血は約三千六百人分。ほとんどが廃棄される現状に、後藤さんは「国はもっと啓発するべきだ」と指摘する。新宅教授も「研究対象者が集まりにくい。医療資源だと知られることも大切」と話した。
 署名は六月末まで、再生医療推進全国ネットの特設サイトでできる。
<臍帯血> 母親と胎児を結ぶへその緒や胎盤に含まれる血液。体の細胞のもととなる幹細胞を多く含むことから、損傷した細胞を修復する再生医療での活用が期待されている。保管先には、白血病などの治療に使うために第三者が寄付をする公的バンクと、脳性まひや自閉症などの治療のため本人や家族が将来使う可能性を想定し、費用を払って保管する民間の私的バンクがある。

関連キーワード

PR情報

社会の新着

記事一覧