遺伝子の異常のために、免疫がうまく働かず、脳にも障害が現れる子どもたちがいます。これまで治療法がなかったある難病に、遺伝子レベルで働く新しい治療薬「核酸医薬」が有効な可能性が出てきました。「切実な患者、家族の思いに応えたい」と研究を続ける医師を、募金や啓発活動で、家族たちが支えています。 (森耕一)
研究が早く進んで、子どもの治療ができるようになってほしい」。八月、東京都内で開かれた日本核酸医薬学会のシンポジウムで、青森市の小山内美和子さん(41)が、数百人の医師や製薬会社の研究員に語りました。
次男の龍弥(りゅうや)さん(15)は「毛細血管拡張性運動失調症(AT)」と闘っています。国内の患者は二十人ほどの希少難病です。
患者は、体の細胞のDNAに傷ができたとき、修復のために重要な役割を果たす「ATM」という遺伝子に異常があります。DNAは、紫外線やたばこの煙など、さまざまな要因で傷つきますが、体には傷を修復する仕組みがあり、多くの場合は健康に大きな影響が出ません。ただ年をとるうち、DNAの傷が積み重なってがんの原因になることが知られています。
難病ATを持つ子の場合、このDNA修復がうまくできないために、全身に病状が現れます。がんになりやすく、運動をつかさどる小脳がうまく育たないために歩けず、滑舌が悪く、字を書くことも難しくなります。免疫力も弱く感染症にかかりやすい状態でもあります。
まだ根本的な治療法はなく、龍弥さんの主治医でもある東京医科歯科大の高木正稔准教授によると、十年前の研究では、患者の平均寿命は約二十五歳でした。現在は、免疫力を補う薬などで寿命は延びています。
◆診断
小山内さんは、龍弥さんが三歳ごろにはふらつきやすいことに気付きましたが、診断がついたときには七歳になっていました。ほとんどの医師は、この病気を知らなかったのです。
小山内さんはこのとき病院からもらった資料に「余命」という言葉があったことをよく覚えています。「この病気のはずがない、と何度も自分に言い聞かせたけれど、書いてある症状が龍弥に全部当てはまった」。二カ月ほど、布団からなかなか出られない日々が続きました。
これではいけない−。携帯電話で必死に病気の情報を調べると、高木准教授ら、この病気を研究している科学者がいることが分かりました。「まだ...
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