川崎殺傷 見守り「地域の力」不可欠 学校での警備限界

2019年5月30日 16時00分

保護者らに付き添われ下校するカリタス小の児童=28日、川崎市多摩区で

 川崎市多摩区でスクールバスを待っていた児童ら十九人が殺傷された事件で、児童らが通う私立カリタス小は、他校と比較しても「見守り」には力を入れていたはずだった。全ての学校がさらに警備を強化すれば、今回のような悲劇は防げるかもしれない。だが、予算面などの制約があり、現実的には厳しい。専門家は、子の安全には「地域の力が不可欠だ」と指摘する。
 カリタス小によると、登戸駅近くのバス停と学校を結ぶスクールバスを毎朝八本運行。教員が駅の改札で児童を集めてバス停まで引率し、順次ピストン輸送している。
 教頭も毎朝、バス停周辺に立ち、事件が起きた二十八日朝も現場にいた。児童一人が命を落としたが、教頭がいなかったら、もっと被害が拡大した恐れもある。男は教頭に追い掛けられた後は、危害を加えなかったという。
 凄惨(せいさん)な事件のたびに強化されてきた通学路の安全対策。昨年五月に新潟市で小二女児殺害事件が起きた後、政府は「登下校防犯プラン」を策定し、「子どもを極力一人にしない」という観点を強化した。日本社会は地域の目があり、一人通学でも安全と考えられていたが、状況が大きく変わったことが背景にあった。
 海外では子の安全をどう確保しているのか。米国ではメリーランド州の州法が八歳未満を一人で留守番させたり、車内に放置したりすることを禁じ、違反者に罰金や禁錮刑を科すと規定。小学校低学年の児童だけで歩いているのを見掛けることはほとんどない。
 英国では「子は親が守るもの」という考えが浸透。ロンドンでは日本の小四程度までは親が通学に付き添うのが一般的だ。低学年は帰宅する際、保護者が迎えにきたのを教員らが確認した上で引き渡す学校が多い。
 だが、日本では共働き家庭が増えており、保護者が送迎を担うには職場の理解をはじめ環境整備のハードルは高い。
 カリタス小は対策として警備員を増やす方針を示した。ただ、公立小になると限界もある。文部科学省の二〇一五年度の調査では、警備員を置く公立小はわずか8・3%。自治体関係者は「予算の制約もあり、警備員の配置は難しい」と話す。
 教員による見守りにも「働き方改革」との両立の問題がある。文科相の諮問機関の中教審は一月、登下校の見守りは教員ではなく「学校以外が担うべき業務」と提言。文科省は、教員の負担をこれ以上増やすわけにいかず、安全確保は自治体の責任で進めるべきだとの立場だ。
 教育評論家の尾木直樹氏は「もはや学校は自分たちだけで安全は守れない。地域の力を借りるしかない。自治体が音頭を取る必要がある。学校も受け身ではなく、地域に積極的に出て関わっていくべきだ」と指摘した。

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