白糸の滝 富士の恵み、水行の地

2020年3月13日 02時00分

名の通り幾本もの糸が垂れ下がるように流れ落ちる「白糸の滝」。しぶきによって鮮やかな虹が架かった=富士宮市で

 樹木の茂る坂道を下り、どうどうと響く水音に耳を傾けると、現れるのが白糸の滝。富士山の湧水が幅百五十メートル、高さ二十メートルに広がる幾筋もの絹糸のように流れだし、時には虹や紅葉と競演。極彩色の錦を出現させる。
 国の名勝・天然記念物となったのは一九三六(昭和十一)年だが、その見事な光景は古くから知られてきた。鎌倉期には源頼朝が巻き狩りの折に立ち寄ったと伝えられ、江戸中期以降は「富士講」修験者の水行の聖地となった。
 二〇一三年六月、富士山が世界文化遺産に登録されると、滝も構成資産の一つとしてさらに名を上げることに。海外からの観光客も多く、年間約五十万人を集める人気の地。にぎやかな声や自撮りのシャッター音をよそに、富士講信者が建てた碑が今もひっそりとたたずみ、信仰の歴史を伝えている。
 文・前田朋子/写真・川戸賢一

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