恐れる住民 悩む自治体 狩野川沿いの指定避難所 沼津・伊豆の国 

2019年12月30日 02時00分

沼津市や伊豆の国市の中心部を流れる狩野川。右奥に見える2棟の建物が沼津市立第四小学校=いずれも沼津市で

 県東部に大きな被害が出た今年10月の台風19号の接近時、沼津市が設置した狩野川沿いの浸水想定区域内の指定避難所で、住民の一部が被災を恐れて避難をやめるなどしていたことが分かった。市は「高層階にいれば大丈夫」と安全性を強調するが、識者は「小中学校や公民館など、昔からの慣例で避難所を選ぶのは改めるべきだ」と警鐘を鳴らす。 (杉原雄介)
 「避難所に行ったのにかえって危険を感じた」。台風19号の接近で風雨が激しくなった十月十二日の昼ごろ、沼津市の会社員女性(57)と母親(84)は近くの避難所である市立第四小学校に車で向かった。千二百人以上の犠牲者を出した一九五八年の狩野川台風に匹敵する恐れがある、という情報も行動を後押しした。
 だが四小はすぐ脇を狩野川が流れ、水位が上がっていた。駐車場にも水がたまり、女性は「決壊したら危ない」と自宅に引き返した。「無線放送で避難が呼び掛けられ、家にいるのは不安だった。でも近所の人も『四小は危ない』と避難しなかった」と話す。
 沼津市危機管理課によると四小には四十三人が避難。当初は体育館に収容したが、避難者から「川の近くで危ない」との声が相次ぎ、校舎内に移した。市のハザードマップでは、狩野川が決壊した場合、五十センチ未満の浸水が想定されるとしている。

台風19号の際に指定避難所となった沼津市立第四小学校。近くを狩野川が流れる

 台風19号で、市は小中学校や地区センターなど二十八カ所を指定避難所とした。このうち八カ所が浸水想定区域内で、最も浸水想定が大きい市立原小学校は二~三メートルになる。同課の担当者は「地域ごとに大規模な避難所を設けることを考えると、浸水想定区域内の施設も使わないといけない」と避難所確保の難しさを口にする。
 六百棟以上の床上床下浸水があった伊豆の国市も、指定避難所十五カ所中六カ所が浸水想定区域内。特に長岡地区の小学校など三カ所は、狩野川決壊時に二~五メートルの浸水が想定されているが、市危機管理課の担当者は「三階以上に逃げれば大丈夫だと市民にも伝えている」としている。
 静岡大防災総合センターの岩田孝仁センター長は「台風19号では水位が静かに上がったが、川が決壊すると水が勢いよく押し寄せて高層階でも安全でない場合がある。避難所は浸水想定区域外に設けるのが基本。慣例にとらわれず、安全な場所に設けないといけない」と指摘する。

◆ハザードマップ改定「平地 ほぼ浸水想定区域…」

 近年の相次ぐ大規模災害を受け、国は二〇一五年に水防法を改正。ハザードマップで想定する水害の規模を、従来の「百~二百年に一度」から「千年に一度」と厳しくした。県東部の自治体もハザードマップと避難所の見直しを進めるが、台風19号時の避難者が想定より多かったことを受け、「避難者を全員受け入れられる体制が作れるか不安」との声も漏れる。
 函南町は現在八カ所を指定避難所としているが、ハザードマップ改定で三カ所が浸水想定区域内となる見込み。そのため台風19号の際は、改定後も区域外となる五カ所と町保健福祉センターの計六カ所で避難者を受け入れた。
 だが実際には、道路水没で近隣市町に帰れなくなった町外在住者も避難。一部の避難所は満員となり、避難者を他の避難所に移した。村上克司防災監は「さらに避難者が増えたら入りきらない恐れもある。町外への広域避難実施も考える必要があると、国や県に訴えている」と語る。
 狩野川が市中心部を流れる伊豆の国市は「ハザードマップを改定すると、平地はほぼ浸水想定区域になってしまう」(危機管理課)。台風19号時は三千四百九十四人が指定避難所に逃げたといい、同課の担当者は「二千人弱を考えていたから驚いた。避難所はもう増やせないので、狩野川が決壊しないよう国に第二放水路を造ってもらわないと」と窮状を口にする。

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