昆虫食、スタイリッシュに 見た目マイルド

2020年5月25日 02時00分

コオロギラーメン。1杯を作るのに100匹のコオロギを使う

 罰ゲーム用のグッズになったり、ネット検索すれば「閲覧注意」と表示されたり…。好奇の目が支える現代の昆虫食ブームに、異議を唱える人がいる。肉、魚、野菜のように、虫を普通の食材にできないか。見た目も味も洗練されたメニュー開発に力を注いでいる。
 JR総武線の馬喰町駅近く。マンションや事務所ビルが囲む路地で、控えめに飾られた「A」の文字看板が見えた。開業準備中の「ANTCICADA(アントシカダ)」は、昆虫食の専門レストラン。「ANT」は英語でアリ、「CICADA」はセミを指す。
 昆虫食の研究、普及活動に取り組む篠原祐太さん(24)が店の代表を務める。メニューは「コオロギラーメン」をメインに据えた。
 2種類の乾燥コオロギをブレンドして出汁(だし)を取る。タレはコオロギの発酵調味料。麺には砕いたコオロギを練り込んだ。1杯あたり100匹のコオロギが使われている。
 見た目は、普通においしそう。味はどうか。麺をすするとエビに似た香ばしさが広がった。魚介類に特有の生臭さはない。後味が、さっぱりしている。
 篠原さんは「虫を普段の食生活に取り入れてもらうため、できるだけ日常的なメニューで可能性を追求したかった」と言う。国民食といわれるラーメンの材料に認められれば、普及へ大きな一歩となると考えた。
 八王子市の高尾山の近くで育った。幼いころから昆虫に親しみ、ときにバッタなどを口にした。人に言えなかった楽しみは、慶応大学商学部に入学した2013年、初めてSNSで告白した。国連食糧農業機関(FAO)が、食糧問題の解決のため昆虫食を提案しているというニュースで、自信を持った。仲間を呼びかけ、虫を捕まえ、調理して食べる活動を始めた。卒業後の仕事になった。
 時代は昆虫食ブーム。食べられる虫の自動販売機が話題となり、テレビや雑誌で昆虫料理が、しばしば特集される。ただし、センセーショナルな紹介が少なくない。「ゲテモノ」のイメージが広がった。篠原さんは、それが悔しい。
 栄養価が高いから、地球環境に優しいからという理由で昆虫食の利点が説かれることにも違和感がある。「消去法で、仕方がないから虫を食べようではなく『虫はおいしい。加えて栄養もある、環境も破壊しない』とはならないのか」
 虫を「愛好家だけのマニアックな食べ物」にしないために。和食、中華、洋食。1000種類以上の調理を試してはふるまった。ラーメンは一つの到達点。週末は、ラーメンに替えてコース料理を提供する。虫だけでなく野草や外来生物も使う。「日の目を見ない生きもの」の価値を発見する機会とする。
 昆虫をおいしくするための知見を集める研究拠点、食育のための教育機関としての役割も目指している。「虫をもっとリスペクトしてほしい」。オープン予定日は6月4日の「虫の日」だ。

◆無印良品も参入

 見た目だけでは材料が分からない昆虫食品には、大手企業も注目する。良品計画(豊島区)が二十日、無印良品のオンラインショップで「コオロギせんべい」を発売した。
 アントシカダのコオロギラーメンと同じ徳島大学発ベンチャー企業が量産する食用コオロギを、パウダーにして練り込んだ。五十五グラム入りの一袋は百九十円。無印良品のホームページでは、開発者が「エビのような、コオロギの味を生かすために余計な材料を使わずシンプルな配合にした」と語る。
 文・浅田晃弘/写真・淡路久喜
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