<おうちで名画を>「ルオーと日本展」 美と魂の共鳴

2020年5月16日 02時00分

ジョルジュ・ルオー《ピエロ》 1925年 油彩/紙 個人蔵(ギャルリーためなが協力) ⓒADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2019 E3556

 緊急事態宣言の延長により、首都圏では大半の美術館が休館のままだ。先月に続く「おうちで名画を」第二弾は「ルオーと日本展」の作品を鑑賞する。二十世紀のフランス画壇を代表するルオーは日本の近代洋画に最も影響を与えた巨匠の一人だ。日仏で響き合う美と魂を味わいたい。
 パリの下町で生まれ育ったジョルジュ・ルオー(一八七一~一九五八年)は、十四歳でステンドグラス職人に徒弟奉公しながら、苦学の末、独自の画風を切り開いた。深いキリスト教信仰に根差し、社会の底辺に生きる人々の悲哀や憤りを主題とした作品が多い。
 「ピエロ」はそんなルオー芸術の代表作の一つだ。幼い頃から身近にあったサーカスで登場するピエロは舞台ではきらびやかに着飾り笑いを振りまくが、素顔は仮面で隠す。社会の矛盾の中で葛藤する人間の象徴のようにルオーは繰り返し描いてきた。面長の顔を黒く太い線で輪郭づけ、人物の強い意志を表現したこの「ピエロ」は日本でも紹介され、大きな影響を与える作品となった。
 「郊外」は、日本の近代洋画史に重要な足跡を残した一人で、ルオーの技巧や精神性に惹(ひ)かれた松本竣介(一九一二~四八年)の代表作だ。田園風景や白亜の建物が郊外生活の幸福感を表す一方で、右手の黒い木が暗い影を落とす。中央の子供たちには、この年に亡くなった長男への思いが投影されているのかもしれない。
 ルオー自身も実は日本の芸術の影響を受けている。師匠のギュスターブ・モロー(一八二六~九八年)が日本美術を研究していたことから、反映された作品や所蔵品に触れる機会もありそれらを参考に自らがイメージする日本をいくつか描いている。「日本の武士」は軍馬の躍動感や気迫に満ちた武者の表情が黒い線で巧みに表現されている。
 ジャンルを超えたルオーと日本の接点もある。「わたしが一番きれいだったとき 街々はがらがら崩れていって」で始まる茨木のり子の詩だ。十代後半の「とてもふしあわせ」だった戦中・終戦直後をつづった詩はこう締めくくられる。「だから決めた できれば長生きすることに 年とってから凄(すご)く美しい絵を描いたフランスのルオー爺(じい)さんのように」
 同展では晩年の作品も鑑賞できる。パナソニック汐留美術館の萩原敦子学芸員は「ルオーは社会の状況をよく観察し世情を描いた。温かみもある。日本の芸術家が本物を目にして理解した絵の力を、実際に見て感じてほしい」と話す。
 ◇ 
 ルオーと日本展(パナソニック汐留美術館・東京新聞など主催)は四月十一日から開催予定だったが、現在、同館は休館中。当面の間、開幕を延期している。最新情報は同館HPへ。
 文・小山田有希
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