<墨田新聞>珈琲香る 職人の街 こだわりの店 手を取り町おこし

2020年5月10日 02時00分

ハンドドリップでコーヒーをいれる「しげの珈琲工房」の峯岸繁和さん=墨田区で

 歴史と伝統が息づく墨田区。最近は東京スカイツリーのお膝元として有名だが、伝統工芸などで職人の技が受け継がれている。ものづくりへのこだわりは、コーヒーにも。自家焙煎(ばいせん)の店が集まり、「すみだ自家焙煎珈琲(こーひー)店連絡会」(すみ珈連)を結成、珈琲で墨田を盛り上げようと活動している。
 コーヒーは苦いと思っている人が多いんだよね」「目的にあわない道具でいれるから味が変わる」。「しげの珈琲工房」店主の峯岸繁和さん(55)は目の前でコーヒーをいれながら、知識を伝授してくれた。
 十八歳でコーヒー業界に入った峯岸さん。「最初は好きだったわけではなく、学んでいくうちに奥深さにみせられた」と笑う。
 町工場が多い同区では、工員や職人が休憩したり打ち合わせで利用するため、昔から喫茶店や自家焙煎のコーヒー店が多かったという。
 ここ数年、国内外のコーヒーチェーン店が進出し、コンビニでも手軽にコーヒーが買えるようになったが、個人の店が脚光を浴びることはなかった。
 転機は二〇一五年。隣の江東区に米国のコーヒーチェーン「ブルーボトルコーヒー」が出店し、自家焙煎などこだわりのコーヒー店が人気を集め始めた。墨田区は「コーヒーで人を呼べないか」と峯岸さんに相談。峯岸さんの店と「マキネスティコーヒー」「Cafe Sucre」「すみだ珈琲」が一六年、すみ珈連を結成した。峯岸さんは「心を込めていれたコーヒーは、味に自信がある。実際お店でおいしいコーヒーを楽しんでもらいたい」と話す。
 一七年からは毎年、すみだ北斎美術館で「すみだコーヒーフェスティバル」を開催。すみ珈連の店のコーヒーを飲み比べたり、焙煎や抽出のワークショップを開き、コーヒーファンを増やしている。「松崎珈琲」と「カフェ・ボンフィーノ」も加わり、現在は六店舗で活動している。
 新型コロナウイルスの影響で、店内での飲食からテークアウトに切り替えるなど対応を余儀なくされているが、在宅時間が長くなり、おいしいコーヒーを飲みたいというニーズが高まっているという。
 すみだ珈琲店主の広田英朗さん(46)は「店の雰囲気からコーヒーの味まで、店には店主のこだわりが詰まっている。新型コロナが収まったらゆっくり店内でも飲んでほしい」と話す。
 スカイツリーや隅田川散策だけではなく、コーヒーを目的に墨田区を訪れる人が増えるように、今日もおいしい一杯をいれ続ける。

◆オンラインで味わう北斎 生誕260年

 古い歴史を誇り、多くの文化人を輩出してきた墨田区。「富嶽(ふがく)三十六景」で知られる浮世絵師・葛飾北斎(1760~1849年)もそのひとり。
 北斎は生涯で約3万点の作品を残したといわれ、欧州の印象派画家にも大きな影響を与えた。
 北斎は約90年の生涯で90回以上の引っ越しをしたといわれ、そのほとんどを現在の墨田区内で過ごした。両国橋や三囲(みめぐり)神社、牛嶋神社など、江戸時代の「すみだ」の様子を描いた作品も多い。
 ちなみに葛飾北斎の「葛飾」は、当時はこのあたりが「武蔵国葛飾郡」だったことから名乗ったといわれている。
 「すみだ北斎美術館」は北斎の作品や魅力を紹介するため、2016年11月に開館した。所蔵する資料は約1800点。北斎に関連した企画展のほか、北斎の技法を学べるタッチパネルや、資料から再現した北斎のアトリエがある。
 今年は北斎の生誕260年に当たり、さまざまな企画展が予定されているが、コロナ禍で4月から臨時休館に。しかし、北斎の魅力を発信する試みは続いている。公式ツイッターで北斎の作品を紹介するほか、インターネット放送「ニコニコ美術館」で、開催が延期になっている「大江戸歳事記」=写真、すみだ北斎美術館提供=が生中継された。
 同展は北斎や弟子たちが一年の行事や暮らしを描いた作品を展示。生中継では美術ライターの橋本麻里さんが聞き手になり、学芸員が展示内容を説明した。生中継の様子は6月14日まで視聴できる。

◆墨田区

 東京23区の東部に位置し、総面積は13.77平方キロメートル。1947年3月、北部区域の向島区と南部区域の本所区が合併して誕生した。広さは23区内で17番目。人口は27万5529人で、世帯数は15万4563(今年4月1日現在)。区の木はサクラ、区の花はツツジ。
 ★墨田区の名称は、昔から広く親しまれてきた隅田川の通称「墨堤(ぼくてい)」の「墨」と、隅田川の「田」の2文字から付けられたという。現在も隅田川花火大会、隅田公園などに「隅田」の字は残る。
 ★両国国技館があるのは、墨田区横網1丁目。読み方は「よこあみ」。「横綱」と勘違いしている人が多い。

◆編集後記

 下町風情があふれるまち並みに、最近では東京スカイツリーがそびえ立ち、時代の変化を感じる。コーヒーブームも時代の変化のひとつだが、職人の堅気なコーヒー店が集まるのも墨田区らしい。
 新型コロナウイルスの感染拡大により、すみだ北斎美術館をはじめ主要な施設はほとんど休業。今日も臨時休業中の東京スカイツリーを見上げながら、一日も早くコーヒー片手にすみだ散歩ができる日が来ることを願っている。
  文・砂上麻子/写真・潟沼義樹
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