女性SP きらり活躍 狭き門突破 首都の安全守る

2020年4月17日 02時00分

要人警護などで活躍する警視庁女性SPの(左から)羽馬梓巡査長、中村志保警部補、中村佳子警部=千代田区で

 政治家にぴったりと寄り添い、周囲に鋭い視線を向ける筋骨隆々の男たち。警視庁の要人警護官、セキュリティーポリス(SP)だ。そんな「ザ・男社会」と思われがちな世界にも、きらりと光る女性たちはいる。どんな女性だろう。「不要不急」の話かもしれないが、東京新聞初の女性警備担当記者(38)が根掘り葉掘り聞いてみた。
 黒系のパンツスーツに、髪は短め。ヒールの低いパンプス。「万が一があれば、盾となって体を張る。動きやすい服装が一番です」。女性SPのリーダー格、中村佳子警部(50)がピシャリと言い切った。
 昨年十月の「即位礼正殿の儀」では、平成より多い百九十一の国や機関から要人が来日。中村警部は、外国要人担当として警備計画の策定段階から関わった。
 SPが属する警護課は、警備の計画策定も任務の一つ。計画作りには、事前に危険を察知する想像力や判断力が求められる。「女性のきめ細かさが生きる面もある」(同課)という。「羽田空港で最後の要人を見送った時、初めて肩の荷が下りました」
 全国の警察で、SP専門の部署を抱えるのは警視庁だけ。厳しい試験を突破した者だけが任務に就く「花形」で、憧れる若い警察官は多い。
 羽馬(はば)梓巡査長(32)もそんな一人だ。羽馬巡査長は、昨年十一月のローマ教皇来日の際の警護が印象に残っているという。多くの人と触れ合う教皇の気持ちを尊重すべく、「目を皿のようにして周囲を警戒しました」と振り返る。「全員怪しく見えてきませんか」との記者の問いかけに「お手柄が出る状況を作ってはいけません」と隙がない。
 中村志保警部補(40)は女性SPの未来を担うエース。昨年六月のG20大阪サミットでは、開催一年半前から大阪府警に派遣された。
 「住んだことがない町だからこそ、新鮮な目で見ることができた」。何度もシミュレーションし、現場を歩いた。「警察警備は、ゼロか百の世界で、失敗という言葉はない。この経験は、東京五輪・パラリンピックの警備にも生かせると思います」と自信を強めた。
 とは言っても、身長など体格や体力は、どうしても男性に劣る。いかにして性差を乗り越えているのか。
 三人は口をそろえる。「私たちは要人をチームで警護している。チーム一丸で取り組んでいれば、必ず役割が生まれる。そこに女性だから男性だからという境界線は感じない」
 SPのボス、宮崎勉警護課長は「家庭の事情などで必要があれば配慮はするが、いざ仕事をする上では男女は関係ない。任務を分ける必要はないと考えています」と話す。

◆武術の有段者 英語も堪能?

 日本のSPの歴史には米国が深く関わっている。
 戦後警察史などによると、1964年のライシャワー駐日大使襲撃事件を機に、65年に警視庁警護課が創設された。当初は、要人の後方での目立たない警護が主流だった。
 だが、74年にフォード大統領が来日した際、大統領を警護する「シークレットサービス」が威圧的な態度で要人を囲むように張り付く姿に、日本の警察幹部は度肝を抜かれる。その翌年、佐藤栄作元首相の国民葬で、当時の三木武夫首相が暴漢に襲われる事件が発生。米国モデルの現在の警護方式に変更された。
 女性SPの誕生は、86年東京サミット前の84年。夫人同伴で訪れる首脳が多く、官邸が女性SPの派遣を強く要請した経緯がある。現在、警護課に所属する女性は数十人で、年々増えているという。
 警備対象者は内閣総理大臣や国務大臣、衆参両院議長、政党の要人、都知事、外国要人など。情勢に応じて、警察庁が指定する。
 選抜条件の詳細は明らかにされていないが、男性は原則身長173センチ以上、女性は160センチ以上。男性は柔剣道のいずれか、女性は柔剣道か合気道のいずれかの有段者。高度な射撃能力や高い英語力が選考に有利な場合もある。集中力や忍耐力があり、機敏性に優れ、研究心旺盛な人が求められる。

◆中村佳子警部 「鉄壁の守り」リーダー格

 SP歴は、警察庁の出向含めて計7年。休日はスカートやカラフルな服で気分転換。英会話教室に通い、スキルアップを目指す努力家。学生時代はバスケットボール部で、ゴール下の鉄壁の守りを担った。身長172センチ。

◆羽馬梓巡査長 堅実タイプのホープ

 SP歴4年。警察官になってからは、ずっとショートカット。修学旅行では「しおり」通りに行程をこなすことに意義を感じる堅実タイプ。休日はバイク「ホンダCB250F」にまたがる。身長は167センチ。

◆中村志保警部補 合気道が得意なエース

 SP歴は計6年。学生時代はブラスバンドに熱中する文化系だったが、警察官となり身体を動かす楽しみを覚え、合気道の指導員に。愛猫のボタンとコタローと戯れるのが癒やしの時間。身長163センチ。
 文・木原育子/写真・潟沼義樹
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