#卒業 できなかった制作展 成長した私 見て!

2020年4月9日 02時00分

展示会場となる「逃げBar」で打ち合わせをする雨宮優さん(右から2人目)と卒業生たち=横浜市神奈川区で

 アート系の学生にとって卒業制作は一生の思い出。新型コロナウイルスの感染拡大で卒業制作展が開催できなかった学生に、横浜市のカフェバー店主が来月、自分の店舗を展示会場として貸し出す。「時間をかけて作ってきたものが誰の目にも留まらないまま終わるなんて悲しすぎる」。SNSで発信したところ、卒業生からの展示希望だけでなく、支援の申し出も相次いでいる。
 「#卒業できなかった制作展」を企画したのは、神奈川区で「逃げBar White Out」を経営する雨宮優さん(28)。「卒業式なくなった」「卒制展示できなくなった」というツイッターの書き込みを見て、場所の提供を思い立った。
 政府が会見で小中高校の休校を要請した二月二十七日、ツイッターで企画趣旨と参加呼び掛けを発信。店を一月に開いたばかりなのに加え、新型コロナの影響で経営は厳しい。だが、音楽フェスも企画する雨宮さんは「アーティストが表現にどれだけの時間と熱量をかけているか、痛いほどわかる」と、開催中は売り上げゼロの覚悟だ。
 ツイートを見たウェブデザイナーや元教員、同じ思いを抱える飲食店などから次々と賛同の声が寄せられ、事務局を組織。専用サイトの運営や展示会場のレイアウトなどを行っている。台東区の小野ウどんさん(30)は、普段はうどん打ち教室を開く一軒家の一階部分を無償で提供する。「自分も今は仕事がない。助け合いです」
 文化服装学院(新宿区)を卒業した伊藤楓さん(22)は、先月二、三の両日に校内で予定されていた卒業制作展の準備中に中止を知らされた。四年間の学びの集大成として、就活を途中でやめて制作に専念してきただけに衝撃は大きかった。
 アパレル業界を目指しており、「会社に入ると学生時代のように好きには作れない。『私』を表現できる最後の機会を与えてもらえてうれしい」と話す。自らデザイン、縫製した洋服数点を出品する。
 中止の知らせに「泣いてしまった」という吉留穂桜花(よしとめほのか)さん(20)は、渋谷区の東京デザイン専門学校イラストレーション科出身。「ここまで力を入れた作品が見てもらえない、と、悲しくて」。同級生から今回の企画を教えられ、「油絵から陶芸まで幅広く教えてくれた中学時代の美術部の外部講師に、成長を見てもらいたい」と目を輝かせる。
 二年前の入学当初は「周りがみんな上手に見えて」自信を失ったが、教員から「珍しい絵柄だね。いいと思うよ」と褒められたのをきっかけに「好きなものを描こう」と前向きに。自分が生まれる前にヒットした漫画の作風に触発され、見せ物小屋をイメージしたポスターや缶バッジ、手鏡などを出品する。

◆参加、支援を募集中

 今月十八日まで、参加者を募集している。クラウドファンディングで作品の搬入出や宣伝の費用を募っており、募集要項や他の参加店舗も確認できる(「#卒業できなかった制作展」で検索)。「逃げBar」(横浜市神奈川区松本町六の四十五の四)では、五月十七~二十三日で作品を入れ替えながら展示する予定。
 文と写真・小形佳奈
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