<Ready?東京2020>道半ば ラストマイル バリアフリー度をチェック

2020年3月29日 02時00分

国立競技場(後方)周辺のバリアフリーについて話す車いすフェンシングの藤田道宣選手=新宿区で

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、一年程度の延期が決まった東京五輪・パラリンピック。しかし、競技会場の整備は着実に進んでいる。最寄り駅から会場までの道のり「ラストマイル」は、バリアフリーになっているか。車いすの選手、全盲の二人とチェックした。

◆国立競技場

 メインスタジアムの国立競技場(新宿区)。パラリンピックの車いすフェンシング出場を目指す藤田道宣(みちのぶ)選手(33)=日本オラクル所属=と向かった。「旧競技場には“ももクロ”のコンサートで行きました。その時は友達に車いすを押してもらったので、自力で行くのは初です」
 大会公式サイトには「アクセシブルルート」として五駅が示してある。その一つ、東京メトロ銀座線外苑前駅からスタートした。
 ホームから改札、改札から地上までエレベーターでつながっているが、残念ながら、競技場とは逆の浅草寄り改札側だけだ。競技場に近い渋谷寄り改札側は、遅くとも七月中旬には利用できるようエレベーター設置工事が進んでいた。
 浅草寄りにあるエレベーター内には、大きな鏡が張ってあった。身だしなみのチェックに使っている人が多いと思うが、「車いすがエレベーターからバックで出る時、鏡で後方を確認するんです」と藤田さん。確かに、狭くてUターンしにくい。
 地上に出て「スタジアム通り」を進む。気になるのは、沿道の店と歩道との二十センチほどの段差。藤田さんは、低い段差なら押してもらえば上がれるが、二段以上は無理だという。「一段の差が大きいんです」
 途中、玄関にスロープを置いて入りやすくした店もあった。藤田さんは普段、事前に店の画像をインターネットで確認するそうだ。「玄関や店内の細かい情報があると便利。例えば床に固定したいすは、車いすがテーブルに着く時に不向きなんです」
 秩父宮ラグビー場前には「だれでもトイレ」があった。一般のトイレも使う藤田さんだが「他の利用者の視線が気になるので、だれでもトイレがあれば、こちらを選びます」。
 藤田さんは、十九歳の時のけがで胸から下がまひした。当初は、電車に乗ると周囲の冷ややかな空気に、「邪魔に思われているのでは…」と感じたという。一方、遠征で訪れた欧州は、石畳の道が多い半面、人々が常に声を掛けてくれた。
 「日本でも心のバリアフリーが進んでほしい。気さくに『手伝いましょうか』と言ってもらえたら」

◆有明アリーナ

 全盲の田丸敬一朗さん(44)とは、完成間もない有明アリーナ(江東区)周辺をチェックした。五輪のバレーボール、パラリンピックの車いすバスケットボールの会場で、ゆりかもめ新豊洲駅などからのアクセスを確かめた。
 田丸さんは、開口一番「言葉の地図はあるでしょうか?」。言葉の地図とは、駅から目的地までの道順を詳細な文章で説明したもの。インターネット上にこれがあれば、音声読み上げソフトを利用して耳で聞き、道順を把握できる。
 例えば「駅の出口4を背に正面方向へ2メートル進むと、左方向への点字ブロックの曲がり角があります」といったきめ細かい情報だ。
 大会公式サイトには、通常の地図や最寄り駅の紹介はあるが、言葉の地図はなかった。田丸さんは「視覚障害者が一人で未知の場所に行くなら、言葉の地図は必須です」と指摘した。
 点字ブロックはどうか。アリーナに最も近い新豊洲駅からは整備されていた。しかし少し離れると見当たらず、東京メトロ豊洲駅、りんかい線東雲(しののめ)駅からは整備されていなかった。この2駅からは徒歩で20分前後かかり、「全盲の人が一人で歩くのは現実的でない」と田丸さん。
 横断歩道の信号が青になったことを知らせる「音響式信号」、横断歩道の中央を路面の突起で示す「エスコートゾーン」も、アリーナ周辺など限られた箇所にしか設置されていなかった。「大会中は警備員が誘導したり、人の流れと一緒に歩けば良いのでしょうが、大会後の街のレガシー(遺産)にはならないのでは」と残念がった。
 文・奥野斐、臼井康兆/写真・隈崎稔樹
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