篆刻美術館(茨城県古河市) 書であり、詩、彫刻でもある総合芸術

2020年2月6日 02時00分

古い石造りの蔵を使った美術館=いずれも茨城県古河市の篆刻美術館で

 渡良瀬川が利根川本流に合流する付近にある古河市。奈良時代から渡し場として栄え、室町時代後期から戦国時代にかけては古河公方の本拠地であった関東屈指の古い都市だ。古河公方の館や古河城などは現存しないが、歴史の深さを思わせる文化の薫りは色濃く残っている。
 その一つが篆刻(てんこく)。噛(ろう)石に文字を刻み、朱色の印泥をつけて、紙に捺(お)したものを鑑賞する芸術だ。約300年前に中国から伝わり、水戸藩主の徳川光圀らが奨励した。篆刻界の長老と呼ばれた生井子華(いくいしか)(1904~89年)らを輩出した古河には、小中学校で児童・生徒が学ぶほど、この文化が根付いている。
 市中心部に、1991年に生まれた日本初の篆刻美術館がある。「もともとこの通りには古いお店がたくさんあったのですよ」と館長の植竹正美さん。付近には古河藩家老の鷹見泉石(たかみせんせき)記念館、小説家の永井路子旧宅、古河文学館などが点在し、古い城下町の雰囲気を醸している。
 篆刻美術館は3階建ての重厚な石蔵を改築した建物の中に、生井子華の作品や日本を代表する現代作家らの作品が展示してあり、静かに鑑賞できる。
 ビデオ上映もあり、篆刻のイロハを学べるが、何といっても楽しいのは、実際に印を制作してみる篆刻体験だろう。
 3日前までに予約すれば、別棟の美術学習室で先生が噛(か)んで含めるように指導してくれる。
 「初心者は一文字で」とのことで筆者は「魚」を選んだ。
 篆書と呼ばれる古い書体を薄紙に書き、縮小コピーをすることから始まる。紙を切り抜いて印材に貼り付け、フェルトペンを使って転写する。この下書きに沿って、印刀で線を掘る。

「魚」の文字を彫って

 教わったように少し開き気味に刀を走らせると、カリカリと心地よい音がする。掘りあがったら、印泥をつけて紙に捺してみる。浮かび上がった印影を見て、何度も手をいれてなんとか無理やり納得した。完成まで所要時間は1時間ほどだ。
 「篆刻は、書であり、詩であり、彫刻である総合芸術。身近に感じてほしい」と植竹さん。
 (坂本充孝) 

◆ひとこと

 契約などで印鑑を使うのは日本と台湾だけだそうだ。本場の中国では芸術としての篆刻だけが生きている。この世界、知れば知るほど、へぇーと唸(うな)りたくなる。
 ★メモ 茨城県古河市中央町2の4の18。JR東北線古河駅から徒歩8分。祝日の翌日、第4金曜日は休館。開館9~17時。入館料一般200円、小中高生50円。篆刻体験(一文字)は高校生以上1200円、小中学生500円。要予約。(電)0280・21・1141

●足を延ばせば…

 ★古河歴史博物館 古河市中央町3の10の56。JR東北線古河駅から徒歩15分。東武日光線新古河駅から徒歩20分。1990年に古河城出城跡に開館した。常設展示は古河藩家老鷹見泉石が収集、記録した蘭学史料など紹介する。3000点以上が国の重要文化財に指定されている。開館9~17時。入館料一般400円、小中高生100円。祝日の翌日と年末年始と館内整理日は休館。(電)0280・22・5211
 ★古河文学館 古河市中央町3の10の21。歴史博物館のそば。歴史小説の永井路子、推理小説の小林久三など古河ゆかりの作家や詩人などの作品や関連資料を展示。第3金曜にはSPレコード鑑賞会も。入館料一般200円、小中高生50円。開館9~17時。祝日の翌日は原則休館。(電)0280・21・1129 

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