<新型コロナ>全国高校総体 初の中止 ボクシング「逸材」荒竹、3連覇幻に

2020年4月27日 02時00分

昨年8月の全国高校総体でピン級を制した荒竹一真(右)=宮崎市総合体育館で

 全国高校総合体育大会(インターハイ)の中止を受け、ボクシング男子の最軽量のピン級で3連覇を目指していた荒竹一真(鹿児島・鹿屋工)は「悔しいとかではなく、仕方ないと思う」と冷静に語った。父で鹿屋工ボクシング部の外部コーチを務める俊也さんは「一真は2年までに結果を残せているが、3年で優勝するんだ、と高校総体に懸けてきた選手を考えるとかわいそう」と集大成に位置付ける他の3年生を思いやった。 (森合正範)
 荒竹は高校ボクシング界の逸材だ。高校時代から名をはせた世界王者の村田諒太(帝拳)、井岡一翔(Reason大貴)、井上尚弥(大橋)も成し得なかった高校総体3度、国体3度、選抜2度の高校タイトル総なめとなる8冠を目標に掲げてきた。1年で三つ、2年で二つの優勝を重ね、無敗で5冠を達成した。
 だが、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、3月の選抜に続き、高校総体も中止に。「8冠の記録はもう気にしていない。『あいつは8冠をとっていないけど、もし大会があったら、絶対にとっていた』と言われるくらいの強さを残したい」と気持ちを切り替えている。
 高校は休校となり、屋内の練習が制限される中、自分自身と向き合う日々が続く。「実戦(試合やスパーリング)ができないのはみんな一緒」と割り切り、「どれだけ気持ちを維持して練習できるか」を心掛けている。
 東京五輪男子ウエルター級代表の岡沢セオン(鹿児島県体協)と一緒に練習する機会が多く、外でできるロードワークやダッシュに重点を置いている。「走ることは記録を計れる。記録を更新したなと分かるし、いつも以上にできていると思う」。父の俊也さんも「モチベーションが高く、内容もいい」と評価した。
 頑張れるのは、まだ先に目指すべきものがあるから。10月に地元で鹿児島国体が控えている。「高校生活で最後の大会になる。今を大切に過ごしながら、国体で優勝して、お世話になっている人たちに恩返しをしたい。将来はパリ五輪に出て金メダルをとりたい」。現状を受け入れ、新たな目標へ。今できることをこつこつと積み重ね、拳を磨いている。

◆「目標失う」「かわいそう」指導者らに戸惑い

 史上初の中止が決まった全国高校総体。関係者は「仕方ない」と理解を示しつつ、戸惑いの声も上げた。
 柔道男子団体で昨年に15度目の優勝を果たした国士舘(東京)の岩渕公一監督は「一番はやっぱり、やる気が損なわれる。目標を見失って、モチベーションがどう変わっていくか」と選手の精神面への影響を懸念。陸上の強豪、相洋(神奈川)の銭谷満監督は「冬季練習の成果を県大会やインターハイで後輩が見て『自分もこうなるんだ』と感じる。毎年そういう流れでチームをつくってきたが…」と残念そうだった。
 大相撲の大関貴景勝らを輩出した埼玉栄相撲部の山田道紀監督は「ショックだと思うが、この経験を将来にどう役立てていけるか。なぐさめるだけじゃなく(コロナ禍が)収まった時に『もっと頑張らないと』と選手に思ってもらうことが大切」と長い目で見た指導の重要性を強調した。
 2018年ユース五輪の体操男子で5冠を達成した北園丈琉(たける)を指導する清風(大阪)の梅本英貴監督は「最大の目標を失うことになったので、かわいそうで仕方がない。子どもたちの顔を見て話したいが、こういう状況で会うこともできないのがつらい」と無念さを口にした。
 開催地側も落胆を隠せない。総合開会式の担当だった群馬県の田村浩之全国高校総体推進室長は「アスリートや準備してきた群馬県の高校生たち。そういう光景が目に浮かぶ。残念の一言に尽きる」と肩を落とした。

◆感染対策費重く 部活制限も考慮

 予想を超えて急拡大した新型コロナウイルスの猛威にさらされた。3月下旬に東京都などが外出自粛を要請し、4月には政府が緊急事態宣言を発令。部活動が制限を受けて強化もままならない状況の下、生徒には過酷な現実だが、全国高体連は「大会に関わる人の安全、安心を確保することが困難」と妥当な判断に帰結した。
 全国高体連は生徒の心情も考慮して「通常開催」の可能性を検討してきた。
 無観客や一部競技のみ開催などの規模縮小も選択肢だったが、全国から選手が往来することによる感染リスクが避けられない上、金銭面でも苦しかった。ある全国高体連関係者は新型コロナ対策だけで数千万円単位の出費になると想定する。
 東京五輪・パラリンピックの影響で分散開催となった今夏の大会は資金繰りに奔走した経緯があり、追加負担分の捻出は容易ではない。あらゆる条件が整わなかった。

◆夏の甲子園「参考にする」 高野連

 日本高野連は26日、全国高体連が全国高校総体の中止を決めたことを受け、夏の大会の開催可否の判断に「このたびの決定が直接影響してくるかは分からないが、われわれが協議を重ねていく上で、高体連の決定に至るさまざまな検討内容を参考にさせていただきたい」などとコメントした。
 高野連は5月20日に第102回全国選手権大会の運営委員会を開き、開催可否などについて話し合う見込み。野球は全国高体連に加盟していない。全国高校総体の中止については「本日の苦渋の決断は全国高体連の判断として、当然尊重すべきであると思う」とした。
 兵庫県西宮市の甲子園球場での全国選手権大会は全国高校総体と同時期に予定され、夏の甲子園への切符を懸けた地方大会は6月20日に沖縄県でスタートする予定だ。

関連キーワード

PR情報