新型コロナ拡大で3・11の企画展中止 苦しむ被災者 忘れないで

2020年3月11日 02時00分

「忘れない3・11展」で展示予定だった写真を見る高橋さん=小平市で

 東日本大震災の発生から、十一日で九年。小平市の市民団体が毎年三月に開いてきた被災地の現状を伝える企画展「忘れない3・11展」は今年、新型コロナウイルス感染症のため中止となった。企画の中心メンバーで、小平市福島県人会事務局長の高橋雅子さん(64)は「復興には程遠い福島の現実を伝えたかった。今も苦しんでいる被災者がいることを忘れないで」と胸の内を語る。 (服部展和)
 「除染土を入れた黒い袋の仮置き場は、以前と比べてさらに多くの場所に広がっていた」。高橋さんは一昨年六月、全国植樹祭に出席するため南相馬市を訪れたときの様子を語り、涙をぬぐった。「本当の意味での復興はいつになるのか」
 西会津町で生まれ、喜多方市で育った。大学進学を機に都内に転居したが、震災直後から被災地支援に取り組んできた。「きたかた応援大使」を務め、年に数回、福島県内の各地を訪れる。「故郷の旅館の宿泊客は今も戻らないまま」。東京電力福島第一原発から離れた会津地方でも、風評被害が続く現実を指摘する。
 忘れない3・11展は、小平市のボランティア講座の受講者らが実行委員会をつくり、二〇一二年に始めた。約二十の市民団体が中央公民館で、復興支援や防災の取り組みを展示や映像で紹介し、講演会を開いてきた。今年も準備していたが、新型コロナウイルスの影響で開催を断念した。
 市福島県人会は、会員の植野稔さん(63)が福島第一原発に近い地域で定点的に撮影している写真三十点余りを展示する予定だった。昨年十二月に双葉町で撮影した写真には、各地で造成工事が進む一方で、津波で流されたがれきの山がそのまま残されている様子が収められている。がれきの向こうには、原発事故の教訓を伝えるための「東日本大震災・原子力災害伝承館」の建設現場が写る。高橋さんは「福島から都内に避難し、戻りたくても戻れない知人もいる。それが現実」とつぶやいた。
 展示予定だった写真は、小平市鈴木公民館で掲示しているが、新型コロナの影響で休館中のため、見られるのは再開後になる。

東日本大震災の当時のまま残されたがれきの山。右奥に建設中の「東日本大震災・原子力災害伝承館」が見える=福島県双葉町で(小平市福島県人会提供)

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