<働き方改革の死角>年功賃金見直し課題 年収大幅減 避ける工夫も

2019年6月22日 02時00分
 定年後の雇用確保で八割の企業が「非正規で給料を大幅に減らす再雇用」を選択する背景には、年齢や勤続年数とともに賃金が上昇する日本特有の年功賃金の存在が大きい。年功賃金は一般的に六十歳の定年退職を前提に賃金カーブを設計。定年前の高い賃金水準で雇い続けると企業は人件費負担から競争力が落ちるとして、労働条件を切り下げることができる非正規雇用に切り替えている。
 だが、シニア社員を積極的に活用して競争力を高めようという前向きな企業や、賃金カーブを緩やかに変えることで総人件費の上昇を抑える工夫の企業もある。要はシニア社員に対する企業の姿勢が問われているといえる。
 年功賃金は、採用時から若年期は会社への貢献は低いが、初任給などで賃金は貢献を上回る=図参照。その後、四十~五十代前半のピークまで賃金は上昇を続けるが、会社への貢献に比べて賃金は抑えられる。定年近くは教育費や老後資金などに配慮して再び賃金が貢献を上回り、定年時に退職金という大きな「後払い賃金」を積むことによって、トータルで賃金と会社への貢献の帳尻が合う。
 年功賃金は、中途で辞めると社員が損になるため、コストをかけて訓練・育てた社員が簡単には退職しないというメリットが企業側にある。社員にとっても生活給が必要な中高年期に手厚く、人生設計に合うメリットがある。このため多くの日本企業で今なお採用されている。
 だが、六十歳定年を超えても働き続ける人が増えている今、従来の年功賃金も見直しが求められている。
 六十歳以降の賃金を大幅に下げないようにするには、大きく二つの方法がある。一つは、四十~五十歳代を中心に賃金カーブの上昇を抑え、六十歳以降の賃金原資を確保するやり方。総人件費の上昇も抑えることができる。NTTは労使で合意し、二〇一三年度から導入。六十歳以上の平均年収は、導入前の二百万円台前半から三百万~四百万円台に上がったという。
 もう一つは、賃金水準に見合った仕事や責任を任せたり、経験を若手らに伝承したりして生産性向上につなげる策。ホンダは定年を六十歳から六十五歳に延長、基本は同じ仕事を任せ、海外駐在もある。賃金水準は五十九歳時点の八割としている。 (編集委員・久原穏)

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