<東京人>寅さんと東京 フーテン支えた まちと人

2019年12月29日 02時00分

柴又駅から柴又帝釈天門前参道商店街に入ってすぐに「高木屋老舗」が、その隣に「大和家」がある

 葛飾柴又、なかでも帝釈天題経寺と門前は、一九六八年から二十七年もの間、山田洋次監督や俳優、スタッフが撮影で二カ月近く通った大切な舞台です。
 草だんご屋「高木屋老舗」の六代目石川宏太さんは「母は柴又をアピールしてくださるのだからと、二作目からは店を休憩室にご提供しました。その間、事務所では山田監督が脚本を直していらして、二階は出演者の控室になり、マドンナも利用されました。高校生の私の住まいに吉永小百合さんがいらしたときの動揺は忘れられません」と振り返ります。
 石川さんにとって寅さん映画は、柴又を外から見つめ直し、柴又の景観を守るきっかけになりました。「映画がなければ私は店を継がなかったかもしれない。監督が『変わるな』と言ってくれたおかげで今の柴又があるのです」
 大海老(エビ)天ぷらで知られる「大和家」は、「株式会社松竹宣伝部柴又分室」という異名をもつ、松竹宣伝部の溜(たま)り場でした。六代目の大須賀仁さんと父親の忠雄さんは、映画にも出演しています。
 「栗原小巻さんがマドンナ春子先生を演じた第四作に、幼稚園の生徒として出演したのが最初です。撮影で子どもたちが飽きてしまうと、渥美さんが土手でわざとずっこけたりして笑わせてくれました。そうするとまた、集中して撮影できたのです。倍賞千恵子さんや佐藤蛾次郎さんもよくいらっしゃいました。子どもの僕にとっては親戚のような存在でした」と懐かしみます。
 門前の人々には、寅さんの人情と風情が引き継がれているのです。 (金丸裕子)

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