<東京NEWS 2019> (8)薬物事件相次ぐ 若年層に拡散 依存深刻

2019年12月30日 02時00分

沢尻エリカ被告を乗せ東京湾岸署を出る車(ナンバープレートを画像処理)=6日、江東区で

 俳優の沢尻エリカ被告(33)が合成麻薬「MDMA」を所持したとして麻薬取締法違反容疑で警視庁に逮捕されたのは十一月十六日。この日、記者は薬物依存の実態に触れるため、更生保護施設で働く職員の研修会に参加していた。奇遇なタイミングの逮捕に驚きつつ、事件取材に奔走した。
 「十年以上前から使っていた。大麻やLSD、コカインも使った」。沢尻被告は家宅捜索を受けた際、観念した様子で「ここにあります」とMDMAの場所を示したという。アクセサリーケースの中敷きの下にあった。「有名人が薬物事件で逮捕されるたび、私も危ないんじゃないかと注意していた」と話したという。
 その言葉通り、今年も有名人の薬物事件は相次いだ。三月に俳優ピエール瀧さん(52)がコカイン使用容疑で、五月にはアイドルグループ「KAT-TUN(カトゥーン)」元メンバー田口淳之介さん(34)が大麻所持容疑で、関東信越厚生局麻薬取締部に逮捕された。
 薬物汚染は霞が関にも。経済産業省のキャリア職員(28)=懲戒免職=が五月、覚醒剤使用容疑などで警視庁に逮捕され、職場の机から注射器が押収された。「仕事のストレスで強い効果を求めて覚醒剤に手を出した」と供述した。
 警察庁によると、昨年薬物事件で摘発されたのは約一万三千八百人で近年横ばい。だが、大麻の摘発者数は過去最多の三千五百七十八人で、半数以上が二十九歳以下だった。大麻は「ゲートウェードラッグ」と呼ばれ、覚醒剤など他の薬物の乱用につながりやすい。
 記者が参加した研修会は、薬物の広がりに危機感を持つ有志職員らが独自で開いたものだった。薬物経験者や職員が薬物を断ち切る難しさを語り合った。
 ある職員は、薬物依存を一本の木に例えて説明した。依存行為は「花」、陶酔を求める心理は「枝」、自分自身の感じ方や考え方や行動のパターンは「幹」、背景にある生きづらさが「根」。「遠藤嗜癖(しへき)問題相談室」(渋谷区)が紹介している考え方で、山本由紀室長は「『根』に焦点を当てて向き合わなければ、依存の『花』は何度でも咲いてしまう」と指摘する。
 生きづらさからの自由を求めて手を出し、使うほど不自由に陥るのが薬物依存の怖さだ。事件の取材を通し、問題の根深さを感じている。 (木原育子)

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