戦時中の人間模様に焦点 荒川で来月3日 作家・吉村さんしのぶ悠遠忌

2019年7月30日 02時00分

したまち支局に「悠遠忌」のPRに訪れた吉村昭研究会の深谷さん(左)と柳井さん=台東区で

 「戦艦武蔵」など丹念な取材に基づく記録文学で知られる荒川区生まれの作家、吉村昭さん(1927~2006年)をしのぶ「第11回悠遠(ゆうえん)忌」(東京新聞後援)が8月3日、区内のアクト21ホール(東尾久5)で開かれる。吉村作品の愛読者でつくる「吉村昭研究会」が毎年、命日(7月31日)前後に催している。 (井上幸一)

吉村昭さん

 今回は第一部で、会員の上野重光さん(75)=葛飾区=が「『昭和の戦争』小論」をテーマに講演。第二部では、朗読家の田中泰子さんが、「身延線」を読み上げる。
 戦後七十年の記念出版で、全六巻の「昭和の戦争」(新潮社)は、吉村さんの太平洋戦争を主題とした作品を集めている。上野さんは、収録された作品群を「青少年」「暴力装置」「隠蔽(いんぺい)工作」「作戦の意義」の四つに分類して考察する。「戦中、戦後でころっと変わった国民の精神に、吉村さんは人間不信に陥った。扇動されたり、陶酔したり、忖度(そんたく)したり、大きな流れの中での人間模様の描写は、現代にも通じるものがある」と語る。
 「身延線」は吉村さんの私小説で、戦争の輪から外れた少年がブドウを食べたいとの思いから旅に出て、年下の労働者の優しさに触れる叙情的な作品だ。
 吉村さんは、現在の荒川区東日暮里で生まれ、空襲で家が焼失する一九四五年まで区内に住んでいた。区の複合施設「ゆいの森あらかわ」(荒川二)に記念文学館がある。
 悠遠忌を前に、研究会事務局長の深谷真志さん(66)=杉並区=、会員の柳井正清さん(71)=千葉県八千代市=が東京新聞したまち支局をPRのため来訪。「赤紙(召集令状)が来ていつか銃をとると思っていた吉村少年は、寄席に行ったり、美術館を巡るなどして人生を燃焼していた。どんな目で戦争を見ていたのか考えたい」と、来場を呼びかけた。
 入場料千円。先着百五十人。午前十時~正午(開場は午前九時)。日暮里・舎人ライナー、都電荒川線の「熊野前」が最寄り。
 問い合わせ、申し込みは吉村昭研究会=電080(6393)2549=へ。 

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