施設に笑い届け @(あっと)いう間の10年 世田谷パブリックシアター移動劇場

2019年6月27日 02時00分

利用者の目の前で笑いを誘う演劇を上演するノゾエさん(右奥)ら出演者たち=世田谷区で

 世田谷区の世田谷パブリックシアターが、区内の高齢者施設や障害者施設で続けてきた移動劇場「@(あっと)ホーム公演」が10年目を迎えた。劇場になかなか足を運べない人にも演劇を楽しんでもらおうと始め、施設からも「利用者が、普段見せない表情を見せてくれる」と好評を得ている。今年の公演も6月に16カ所であり、多くの利用者がパントマイムあり歌ありの明るい劇を堪能した。 (神谷円香)
 今年の最終公演は十八日、同区下馬の通所介護施設「フレンズケアセンター」であり、二十五人の利用者が約三十分の公演を満喫した。@ホーム公演の脚本と演出を十年手掛けてきたのは、彩の国さいたま芸術劇場主催の六十歳以上による群像劇「一万人のゴールド・シアター2016」の演出も務めたノゾエ征爾(せいじ)さん(43)。パントマイムのプロ役者山本光洋さん演じる操り人形のチャーリーを中心に、大道芸や、利用者も口ずさめる歌を盛り込んだ脚本を例年書いている。
 今年は、ノゾエさん演じるサーカス団の青年ダニエル健太郎が、チャーリーを作った「誕生秘話」を上演。「見上げてごらん夜の星を」「とんぼのめがね」など利用者が知っている歌をはさみ、手品のような芸やバルーンアートも披露した。利用者の女性(91)は「手品みたいなのは初めて見た。世田谷パブリックシアターは近いけれどなかなか自分で行けないので、また来てくれたら見たい」と楽しんだ。
 ノゾエさんはシアターから打診された当時、見学に行った高齢者施設で、職員が声を掛けてもうつむいたままの利用者の様子に、「自分の劇が届くのかどうか」と不安もあった。劇場での上演と異なり観客は目の前にいる。「初めは距離感が分からなかったが、目を見て話せば良いと思うようになった」と振り返る。
 十年を数えた公演。ノゾエさんは「一般の生活者に非日常の芝居を届け、励ます力があるとこの活動で教えてもらった。自分にとってすごく大事な活動」と話している。

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