<新型コロナ>感染者数 世界2位のロシア なぜ死者数 少ない?

2020年5月20日 16時00分
 新型コロナウイルスの累計感染者数が世界2位のロシアで、感染者数に対する死者数の少なさが話題になっている。公式発表の死者数が操作されている疑いを欧米メディアが報じた一方、地方の保健当局が首長の顔色をうかがい、過少に報告しているとみる識者もいる。医療体制の拡充が奏功している可能性も高いが、果たして真相は-。 (モスクワ・小柳悠志)
 ロシア政府の公式発表で十八日までのロシアの感染者は二十九万人余。一方で死者数は二千七百二十二人で致死率は約0・9%。英国やイタリアの約14%、米国の約6%と比べて極端に低い。
 英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は十二日、「新型コロナによるロシアの死者数は、公式発表より70%多い可能性がある」と報道。四月のモスクワなど二都市の死者数が、過去五年の同月の平均を大きく上回っているとの分析が根拠だ。だがFTの主張を加味しても、致死率は他国と比べて低いままだ。
 死因を新型コロナとみるか持病などとみるか、各国で基準は異なる。ロシアの場合は強権的と評されるプーチン大統領の存在もあって欧米メディアが疑いの目を向けているようだ。ロシア外務省はFTの報道に「事実無根」と抗議した。米大手紙ニューヨーク・タイムズなども同様の報道をしている。
 「欧米メディアは政権による実態隠しを疑っているようだが、実情は違うだろう」。こう分析するのは政治学者のドミトリー・オレシキン氏だ。同氏は中央政府ではなく、地方の病院や保健当局など現場側の過少報告の可能性を指摘する。
 プーチン大統領らが「コロナに勝つ」と号令を掛ける中、連邦を構成する各地方の首長は、他地域と比べて多くの感染者や死者が出るのを恐れている。現場の医師や保健当局はこうした空気を読み、患者の死因を新型コロナではなく持病と判断する傾向が出てくるという。自身が属する組織を守るための一種の忖度(そんたく)だ。
 旧ソ連時代を含め、中央集権構造のロシアで見栄えのよいデータが報告されるのは「伝統」(オレシキン氏)とされる。今回のコロナ禍でも、モスクワ市長が、報告された感染者数に対し「実際はもっと多いのでは」と公の場で疑いを挟む一幕もあった。
 ロシアはPCR検査を既に七百万件以上実施するなど、感染者を早めに洗い出し、隔離する作戦を取っている。軍が病院を各地に突貫工事で完成させるなど、挙国一致態勢だ。政府は陽性となった人の半数近くが無症状としており、充実した検査態勢と早期治療で致死率が抑えられていると主張している。

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