リビア内戦 収束見えず 「雇い兵」まん延 大国の介入続く

2020年5月18日 16時00分

今年1月にリビアに送り込まれ、戦闘員になりかけたアブデルイラー・モハメドさん(前列中央)ら。写真はUAEで訓練時に撮影=本人提供

 新型コロナウイルスが世界的に流行する中でも、二〇一一年から続くリビア内戦が収束する糸口が見いだせない。混迷を深めているのは雇い兵や兵器を送り込む外国の介入だ。今年一月にはスーダンでアラブ首長国連邦(UAE)の警備会社の求人に応じた若者たちが、だまされてリビアに送られた問題まで明らかになった。 (カイロ・奥田哲平)

■UAE勤務が

 夕食時に渡されたペットボトルの飲料水が、なぜかリビア製だった。電話取材に応じたスーダンの電気技術者アブデルイラー・モハメドさん(33)は一月、UAEで三カ月間の訓練を終え、約四百人の同胞とともに航空機に乗って「勤務地」に向かった。UAE国内と聞かされていた。
 会社側は、リビアの軍事基地にいるのを認めた上で「これから戦うんだ」と戦闘員になるよう促した。モハメドさんらがスーダン国内の家族に身の危険を訴えたところ、UAE大使館前での抗議活動が始まった。一行は六日後に母国に戻れたという。
 発端は地元紙に掲載された求人広告だった。「ブラック・シールド」という警備会社がスーダン人を警備員に採用するという内容だった。スーダンの一人当たりの国民総所得(GNI)千五百六十ドル(十六万円)に対し、訓練期間だけでも月給五百ドルが約束された。仕事のない多くの若者には破格だった。

■国民軍を支援

 モハメドさんとは別の機会に応募し、UAE国内で訓練している最中にリビア行きに気付いて帰国した無職バラアさん(26)は「戦闘に加われば、月四千ドルの支給を約束された」と話す。「会社側は私たちの貧しさを利用して欺いた」と憤る。
 警備会社の背後にいるのは誰か-。スーダン検察当局に詐欺行為を告発したソレイマン・ジディ弁護士は、裕福なUAEと高失業率に悩む貧困国スーダン両政府の密約があったと疑う。
 リビア内戦は、首都トリポリを拠点とするイスラム色の強いシラージュ暫定政権と、東部を拠点とする世俗派の軍事組織「リビア国民軍(LNA)」が対立。UAEはエジプトやサウジアラビアとともにLNAを軍事支援する。旧カダフィ政権の軍高官だったハフタル氏が率いるLNAは昨年四月から首都陥落を目指して攻勢を掛けたが、警備員をうたう求人が始まった九月ごろには戦局が膠着(こうちゃく)状態になっていた。

■ロシアとトルコ

 内戦の構図を一層ややこしくしているのが大国の介入だ。ロイター通信などによると、国連は今月、ロシアのプーチン大統領と関係が深い民間軍事会社「ワグネル」が二〇一八年十月から八百~千二百人をリビアに派遣し、LNA側に狙撃手や軍事技術を支援しているとの報告書をまとめた。
 ワグネルはシリア内戦やウクライナ紛争でも雇い兵を派遣したいわく付きの企業だ。プーチン氏は今年一月の会見で雇い兵の派遣を否定。ただ、ロシアにとっては世界十位の原油埋蔵量を誇るリビアに影響力を確保できれば、地中海を挟む欧州に圧力をかけられる地政学的な足場になる。これに対し、暫定政権の後ろ盾となっているトルコは昨年十一月に軍事協定を結び、正式な援軍要請を受けたとして無人機などを派遣。シリア人権監視団(ロンドン)は、トルコが雇ったシリア反体制派の民兵約八千人をリビアに送り込んでいると伝えた。
 リビア情勢を巡っては、今年一月に開かれた国際会合で各国が紛争介入を控え、リビアへの武器禁輸を定めた国連決議を順守して軍事支援を停止する共同声明を発表した。だが、停戦はすぐに破綻。どの国も約束を順守せず、最新兵器と雇い兵が入り乱れている。内戦はもはやリビア国民の手を離れている。

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