<新型コロナ>第2波懸念 韓国、出口戦略に試練

2020年5月13日 02時00分

11日、クラブでの集団感染発生を受け、ウイルス検査を待つ人で混雑するソウル市内の病院=聯合・共同

 【ソウル=相坂穣】韓国の中央防疫対策本部は十二日、ソウル市の繁華街、梨泰院(イテウォン)のクラブで発生した集団感染の感染者が百二人になったと発表した。性的少数者(LGBT)の多い店が発生地となり、差別や偏見を恐れて検査を回避する客がいるとみられ、感染拡大が懸念される。韓国では四月末から市中感染がほぼ収束していたが、一転して緊張感が漂っている。
 六日に感染が確認された二十代男性が、二日未明に同性愛者が大勢集まる梨泰院のクラブ三店を相次いで訪れていたことが判明。男性は熱やせきがあったがマスクを着けていなかったといい、男性から感染が広まったとみられている。
 携帯電話の基地局のデータなどから、当時一万人以上が付近にいたとみられる。市当局などはクレジットカードや防犯カメラの記録から、濃厚接触者の特定を急いでいるが、難航している。同性愛者の多い店では個人情報の流出を懸念して、カードでなく現金決済の客が多い。
 韓国では四月下旬から顧客名簿の作成などを条件にクラブの営業が再開されたが、保健当局が今回の三店舗を確認したところ、名簿にある計五千五百人のうち半数と連絡が取れなかった。
 背景には、韓国社会のLGBTへの不寛容さが指摘されている。儒教の家族観や、同性愛に否定的なキリスト教の影響が強く、アウティング(本人の望まない性自認の暴露)を恐れる当事者が多い。
 クラブを出入りした客から、家族や知人への二次感染も広まっている。ソウル市の朴元淳(パクウォンスン)市長は十二日、保健所などで匿名検査を始めたとし「まだ、感染経路が不透明だ。周辺にいた人は身辺安全を心配しないで自発的に検査を受けてほしい」と訴えた。
 LGBT支援団体も同日会見し「身元が露出して職場差別や家庭内暴力にさらされることを懸念する。検診と隔離の過程で不利益を受けないようにしたい」と述べた。
 韓国では四月二十九日に市中感染がゼロになり、小中高校の授業も十三日から段階的に再開される予定だったが、今回の集団感染で一週間の延期が決定。個人情報を使って感染者を徹底追跡しながら、外出制限を緩めていくという政府の出口戦略が揺らいでいる。
 高麗(コリョ)大の金宇柱(キムウジュ)教授(感染内科)は「今後も宗教、性的少数者に限らず、同様の問題が起きうる。プライバシー侵害は防疫に役立たない。個人の特定につながる情報は避け、感染者の訪問場所と滞在時間など最小限の情報公開に限る制度整備が必要だ」と指摘した。

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