<新型コロナ>世界の刑務所でクラスター 米で受刑者8割感染も中南米では暴動や逃亡

2020年5月3日 02時00分

4月25日、エルサルバドルの刑務所で、すし詰め状態で座らせられた裸の受刑者=エルサルバドル大統領府提供、AP

 【ニューヨーク=赤川肇】新型コロナウイルスが刑務所など世界の収容施設を直撃している。密閉、密集、密接の「三密」になりやすい特性が感染拡大に拍車を掛け、米国では受刑者の八割近くが感染した刑務所もある。各当局は微罪の人らを釈放したり自宅軟禁に切り替えたりと対策を迫られ、収容環境が劣悪とされてきた中南米諸国では暴動や逃亡も相次いでいる。
 「刑務所で死ぬのはお断りだ」。四月二十四日、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスの刑務所。複数の受刑者らが屋根に上り、横断幕を掲げたり寝具を燃やしたりし、釈放や感染対策の拡充を叫んだ。職員の感染判明をきっかけに九時間の暴動に発展したという。
 AP通信によると、コロンビアでは受刑者ら二十三人が暴動で死亡、ブラジルでは千三百人以上が逃亡するなど、中南米の刑事施設では新型ウイルスに絡む混乱が続発。国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウオッチは「中南米の大半の刑務所や少年院は不衛生で過密状態。感染拡大には最高の条件だ」と収容人数の削減などを訴える。
 こうした中、エルサルバドル大統領府は二十七日、国内で数十人が死亡した殺人事件が刑務所内からの指示に基づくとみて、裸の受刑者らをすし詰め状態に座らせて検査する写真を公開。感染不安を逆手に取った見せしめとみられている。
 刑事司法専門の米報道機関マーシャル・プロジェクトの集計によると、世界で最も受刑者が多い米国の刑務所では二十九日時点で少なくとも一万四千五百人が感染し、二百十八人が死亡。獄内の感染率は一般の二・七倍以上という。
 中西部オハイオ州は二十九日までに州内の受刑者五千六百人に新型ウイルス検査を実施し、うち68%が陽性。感染率が78%に上る刑務所もあり、米国では刑事施設が感染拡大の「温床」(ワシントン・ポスト紙)の一つになっている。
 過密対策として誰を釈放するかの選別も問われる。
 国連人権理事会の専門家らは二十四日、イスラエルが感染対策で数百人の自国民を釈放した一方、約百八十人の子どもを含むパレスチナ人の収容者にはこうした対応を取っていないと問題視。「国際法違反の差別的な扱いだ」と述べ、イスラエル占領地の東エルサレムで感染率が「著しく」上がっている点にも触れた。
 国連のバチェレ人権高等弁務官(前チリ大統領)は、多くの国々では新型コロナウイルス問題以前から収容施設の過密が問題になっていたと指摘。高齢者や政治犯らの釈放を促しつつ、「収監は最後の手段であるべきだ」と訴えている。

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