PCR検査態勢 積極的 遅れ 明暗分けた各国

2020年4月30日 10時00分
 新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中、PCR検査の拡充を求める声が高まっている。韓国やドイツでは早くから検査を積極的に実施し、感染者の抑え込みにつなげた点が評価された。一方、米国では初動の検査の遅れが事態悪化につながったとの批判も根強い。PCR検査を巡る各国の状況を追った。(新型コロナウイルス取材班)

■「ドライブスルー」で韓国徹底

 「少し我慢してください」。公衆電話ボックス型のブース内の患者に看護師が声をかけ、鼻に綿棒を入れる。韓国ソウル市のヤンジ病院が三月上旬に導入した「ウオークスルー検査」は二、三分で終了し、数時間で結果が出る。
 韓国ではピーク時の二月末に一日九百人を超えた新規感染者が、十人前後まで減った。厳しい外出制限をせずに感染拡大を抑えた対策の要が、PCR検査の徹底だ。累計検査数は六十万件超、全人口の1%に達した。日本は十三万件(二十八日時点)にとどまる。
 韓国では、ドライブスルー検査も二月に導入され世界で注目されたが、ウオークスルーはガラスで隔てる非接触型のため、より感染リスクが低く、所要時間も短い。同病院は「簡易的な防護服でよく疲労も軽減できる」と話す。施設整備には国の支援が得られる見通しだ。

ソウル市のヤンジ病院で4月23日、公衆電話ボックス型のブースに入った女性のPCR検査を行う看護師=一部モザイク処理、相坂穣撮影

 官民挙げた検査態勢の背景には、二〇一五年に国内で三十八人が死亡した中東呼吸器症候群(MERS)の教訓がある。政府の初動が遅れた反省から、疾病管理本部の権限を強化。司令塔として各省庁を動かし、民間企業が開発した検査キットを早期承認させ、大量供給につなげた。高麗大の金宇柱教授(感染内科)は「感染症は発症から隔離までの時間を減らすことが重要。医療崩壊を心配するより感染者を見つけ出すのが先だ」と指摘する。

■初動早くドイツ累計200万件

 欧州各国の中で、死亡率を抑えているドイツ。検査数は一日平均五万件で、累計二百万件を超える。医療崩壊を防ぎながら大量の検査を可能にしているのは、やはり初動の早さと検査態勢にある。
 ベルリンのシャリテ大学病院ウイルス学研究所のドロステン教授は「一月から全国の研究施設に検査に必要な情報や資材を提供してきた」と語る。検査は無料で、大規模病院は院外に発熱外来や検査用テントを設置。一部自治体では防護服を着た保健当局者が自宅への訪問検査を行っている。

■ロシアは看護師の訪問方式

 ロシアも今月から看護師による訪問方式を導入、累計検査数は三百万件に達した。死亡率は1%未満。政府の数値操作を疑う声もあるが、プーチン大統領は「流行状況はコントロール下にある」と自信を見せる。

■全住民に拡大検討のUAE

 同じく死亡率1%未満のアラブ首長国連邦(UAE)はドライブスルー検査を十四カ所設置し、高齢者や妊婦、慢性疾患の人を優先。無症状の人も三百七十ディルハム(一万円)で受けられる。これまで約百万件の検査を実施、今後は九百七十万人の全住民への拡大を検討している。

■「お役所主義」で遅れた米国

 感染者数が世界最多の米国では、PCR検査を一元的に担っていた米疾病対策センター(CDC)の失敗と、政府の「お役所主義」が検査の遅れを招き、感染拡大の一因になったとの批判が広がる。
 米紙ワシントン・ポスト(電子版)によると、CDCは独自開発の検査キットの使用を通達。一月下旬、全米二十六の公立研究機関に送ったが、うち二十四機関で不具合が判明した。この間、米西部の大学が独自にキットを開発したが、使用を認めず検査が滞った。
 政府はその後、民間の協力で検査を拡大。二十七日には、薬局での検査を認めるなどの新たな検査指針を発表した。ただPCR検査は時間と技術が必要として、簡易版の抗原検査が検査拡大の「打開策」(バークス調整官)としている。

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