<新型コロナ>貧困アフリカのジレンマ 封鎖続ければ飢餓…30万人死亡の恐れも

2020年4月26日 02時00分

ナイロビで100万人が暮らすと言われるアフリカ最大のスラム街=2019年1月(沢田千秋撮影)

 新型コロナウイルスが世界でまん延する中、アフリカの感染者は二十五日現在、世界保健機関(WHO)調べで欧州の1・4%にとどまっている。しかし、国連は十七日、アフリカで今後三十万人が死亡する恐れがあると警告。貧しさゆえに、現在の厳しい感染対策はいずれ限界を迎え、真の脅威が訪れつつある。 (ロンドン・沢田千秋)

■街は封鎖しマスクを義務化、違反はむち打ち

 「コロナの流行を受け、マサイの人たちは家の入り口に水おけを設置して手を洗っている。最近は外を警戒して遠出していない」。ケニアの国立保護区に隣接するホテル役員、市原紀子さん(55)は言う。

コロナウイルス流行を受け、手洗いするマサイの人。手洗い用タンクの栓にアカシアのとげを使用している=市原紀子さん提供

 首都ナイロビで、社会的距離や手洗いは浸透。街は封鎖され、夜は外出禁止でマスクも義務化された。違反すると、むちで打たれ逮捕される。大統領自ら給与を八割削減し、所得税を減税。ケニアの感染者は約三百三十人だ。

■封鎖で失業者増、物流は停滞…住民「感染の前に餓死」

 ウガンダの感染者は七十人強。現地で活動するNGOテラ・ルネッサンスの小川真吾さん(45)も「最初の感染者が出た翌日、国際線が停止。日本より迅速に対策が取られた」と話す。
 「長引いた内戦の影響で医療体制が脆弱(ぜいじゃく)な中、感染拡大は最悪の事態を招く」とし、手洗いセットの設置を続けるが、封鎖で失業者が増大し、物流も停滞した。「住民は『ウイルスに殺される前に飢餓で死ぬ』とささやく。経済の低迷と、銃も使う当局の強権的な感染対策に対し、暴動が起きかねない」と恐れる。

■ウイルスの到達遅く、先進国より適切な措置

 アフリカ大陸の感染者は、約一万八千人で死者は約八百人。リバプール大のマーク・ナンインギ博士研究員(流行疫学)は「ウイルス到達が他より遅く、この時間差がアフリカ各国に空港閉鎖や外出禁止など、先進諸国よりも適切な措置を取らせた」と評価する。

■交通網が未発達で地方に感染及ばず

 南アフリカ、クワズルナタール大のアケベ・アビア研究員(環境細菌学)は、感染者数の少なさにアフリカ特有の事情をみる。「交通網が未発達で感染が都市内で限定的だった。また、夏だった南半球では、ウイルスの感染力が低かったかもしれない」という。検査不足の可能性については「実態と大きな差があれば、病院は既に重症者で混雑し、地方でも大勢が死んでいるはずだ」と否定的だ。

■この大陸で封鎖は不可能…解除で感染すれば重症化、のジレンマ

 ただ、未来は明るくない。三人に一人が貧困ラインの一日一・九ドル以下で暮らすアフリカで、一枚三ドルのマスクは高級品だ。病院から遠く離れた地方に水道や電気はなく、多くが農作業に毎日出かけ、市場に行き、物々交換する。都市のスラム街では数十人が掘っ立て小屋で共同生活。三億人が屋外の共同トイレを使うといわれる。
 サハラ砂漠以南で、コロナウイルスが重症化しやすい六十五歳以上が3%しかいないことは好材料だが、恒常的な栄養失調による免疫低下が重症化の要因ともなりかねない。
 ヨハネスブルク大のアレックス・ブロードベント教授(疫学理論)は「外出制限や封鎖は、この大陸では不可能。その日暮らしの住民に封鎖を強いれば、飢餓が広がることは明らかだ」と話す。「封鎖は先進国で年配者を助けているが、アフリカで続ければ、多くの子どもが死ぬ」と言い切り、感染の危険がある中で、いずれ封鎖を解かざるを得ないジレンマを指摘した。

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