<新型コロナ>タイ、非常事態宣言で仕事激減 スラム貧困層 不安拡大

2020年4月16日 02時00分

仕事がなく、娘らと過ごすラームさん(中)

 【バンコク=北川成史】貧富の格差が大きいタイで、新型コロナウイルスの感染拡大はスラムに住む貧困層にも大きな影響を与えている。非常事態宣言に伴う経済活動の縮小で仕事は激減。十分な保護を受けられないまま、劣悪な環境でウイルスに感染する危険にさらされている。
 約十万人が住むというバンコク最大の貧民街「クロントイ・スラム」。幅約一メートルの路地にバラックが並ぶ。住民は港での荷積みやタクシー運転手、露天商などの仕事を生活の糧とする。
 三月下旬以降に発動された商業・娯楽施設の閉鎖を含む非常事態宣言や夜間外出禁止令の打撃は計り知れない。スラムで生まれたチョーイさん(60)は「梱包(こんぽう)作業員だった夫(59)が先月末で雇用を打ち切られた。これまでになく苦労している」と顔を曇らせる。
 スラム内の一部地区では出稼ぎのカンボジア人が多く、約一割を占める。その一人、ラームさん(27)は共同住宅の四畳半ほどの一室に四歳と一歳の娘を含む家族四人で住む。「日給三百バーツ(約千円)でメイドをしていたが、最近は仕事がない」と漏らす。港湾労働者の夫(31)も同程度の日給だが、仕事がない日もある。
 帰国したカンボジア人もいるが、ラームさんは「戻るお金がない」。非常事態宣言で事実上の国境封鎖になり、帰国後、タイに再び入国して働けるのかという不安も抱いている。
 一方、住民の雇用や健康を守ろうとする動きもある。NGO「シャンティ国際ボランティア会」のスタッフでスラムに住む女性らは布製マスクを作っている。元々、バッグや装飾品を製作し、外部に販売していたが、二月中旬から注文が途絶えた。代わりに一日三百五十枚ほどのマスクを作っている。援助団体や企業がこれを購入し、スラム住民らに配布している。

布製マスクを作る住民女性ら=いずれもバンコクのクロントイ・スラムで、北川成史撮影

 タイのウイルス感染者は二千六百人を超えた。タイ商工会議所の幹部は地元メディアに、感染拡大が今後数カ月続けば、一千万人が失業すると指摘する。タイ政府は影響を受けた労働者に月五千バーツ(約一万七千円)の支給を決めたが、申請者が当初の支給対象者数を大幅に上回るなど、支援が行き届かない恐れが残る。
 同会の八木沢克昌(かつまさ)・アジア地域ディレクターは「スラム住民は経済的に一番しわ寄せを受ける上、密集した環境に住んでいるため、感染が広がると手に負えない」と懸念する。政府に対策の充実を求めるとともに、スラムに暮らす子どもたちへの独自の緊急奨学金制度設置も検討している。

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