「長期戦」と「長丁場」

2020年5月18日 02時00分
 おやっ、と思った。
 新型コロナウイルス対策を検討する政府の専門家会議の尾身茂副座長の会見でのこと。
 緊急事態宣言の期限を控えた一日、外出自粛などの対策継続を訴えていた中で「われわれは今まで『長期戦』というような言葉を使ったが、いろんな方のご意見を聞くとどうも別の言葉がいいんじゃないか」と発言した。
 代わりの言葉が「長丁場の対応」だ。「戦争」を想起させる言葉を慎重に排除した。
 そう思ったのは日本記者クラブの会見で、会議メンバーで研究倫理を専門とする武藤香織東大教授が感染症対応では「『戦争』という言葉を使いがちだが、戦争で犠牲になるのは大将ではなく弱い人たち、その人たちの犠牲の上に勝つというような発想はとても承服しかねる表現」と訴えていたからだ。
 専門家会議は専門的で難しい話をどう正確に伝えたら人々に伝わるか課題を抱えている。「常に厳しいご批判や指摘をいただいている」と武藤さんは言う。その自覚があるから会議も言葉を模索したのだろう。
 確かに、感染症の拡大は公衆衛生上の事態で、武力による争いではない。
 安倍首相は対策は「持久戦」と言う。「第三次世界大戦」とも発言したという。
 科学知識を提供する専門家は政権からの独立性が求められる。政権とどう距離を取るか、長丁場のせめぎ合いでもある。 (鈴木 穣)

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