染み入るJINのせりふ
2020年5月13日 02時00分
出掛けられない連休の収穫が、テレビドラマ「JIN-仁-」の再放送総集編だった。平成から江戸末期にタイムスリップした医師が、十分な技術や医療機材もないまま、コレラなどの病に立ち向かう。新型コロナ禍で苦しんでいる現在、タイムリーだった。
名せりふが多い。有名なのが「神は乗り越えられる試練しか与えない」。出典は新約聖書の「コリント信徒への第一の手紙」だという。原典を確認すると、「神は試練に耐えられるよう逃れる道も備えてくれる」との、救済のための「出口戦略」も用意されていた。
地味なエピソードだが、子どもをかばって馬にけられて、頭に大けがをした母親のせりふも印象に残った。麻酔なしの手術を告げられたのに対し、「私、辛抱だけは得意なんです」と、うめくように答えた。
母親のうめきは、今、多くの人が感じているだろう痛みを連想させる。仕事、学業、生きがいを封じられ、緩和のための十分な「麻酔」も与えられず、「辛抱」を続けている。
辛抱は報われず、緊急事態宣言はあっさり延長された。苦境は続く。感染を確認するPCR検査の少なさなど、政府や専門家会議の処方箋はそもそも、正しかったのだろうか。
間違いは素直に認めて処方箋を練り直し、今度こそ、出口戦略まできちんと導いてほしい。「宣言の再延長」には耐えられないほど辛抱は切羽詰まっているのだ。(熊倉逸男)
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