現実を忘れた短い時間

2020年4月20日 02時00分
 根拠のない悲観と楽観が分刻みで交錯する。こんな不安定な日々の中で最近、短い間だけ現実を忘れる時間に二回出合った。
 民放の番組で、タレントの渡辺直美さんとお笑いコンビ「ハライチ」の岩井勇気さんによるコントをみた。「醤油(しょうゆ)の魔人」に扮(ふん)した渡辺さんと「塩の魔人」の岩井さんが、料理をめぐるさや当てを音楽のリズムに合わせて演じる。あまりの芸達者ぶりに腹を抱えて笑ってしまった。
 もう一つは、昨日行われた競馬のクラシックレース「皐月賞」のテレビ中継だ。無観客でいつもの大歓声はなかった。
 しかし競走馬たちは頭を上下に懸命に振りながら全力でターフを駆け抜けた。騎手たちもそれに応えて必死に手綱を引いた。
 今、多くの芸人たちが笑いを映像で配信して人々を励まそうとしている。競馬関係者は楽しみにしている人々のためにレースを続けようと力を振り絞っている。
 医療、保健、小売り、輸送、ゴミ収集・処理、役所、介護、保育…。挙げていけば切りがない。多くの現場で替えの利かないプロたちが、不安を胸に押し込み働き続けている。感謝の念しか思い浮かばない。
 同時に、文化やスポーツの担い手もまた人々のために懸命だということを遅まきながら学んだ。彼らの励ましも今の自分には生きていく上で必要だと痛感した。 (富田光)

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