難局と指導者の態度

2020年4月15日 02時00分
 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、緊急事態を宣言した安倍晋三首相。四月七日夜の記者会見で「今、私たちが最も恐れるべきは、恐怖それ自体です」と述べた。SNSで拡散される虚偽情報によるパニックなどの被害が、感染自体の被害よりも甚大になり得るとして警鐘を鳴らしたのだ。
 首相が意識したか否かは不明だが、この言葉は、ルーズベルト米大統領が一九三三年、一期目の就任演説で語った表現でもある。当時は二九年に始まった大恐慌の真っただ中。演説冒頭「我々が恐怖すべきはただ一つ、恐怖そのものだ」と語り、米国民を鼓舞した。
 大統領が亡くなったのは七十五年前の一九四五年四月十二日。当時、就任したばかりの鈴木貫太郎首相は、太平洋戦争末期で日本にとって厳しい戦局だったにもかかわらず、大統領の功績をたたえ、深い哀悼の意を表明した。それは、敵ながら紳士的で礼儀正しい態度だと欧米には受け止められた。
 鈴木首相は大戦末期の厳しい局面で、軍部の本土決戦論を排してポツダム宣言受け入れに導き、八月十五日に内閣総辞職した。
 時は下り、安倍首相は会見で「最悪の事態になった場合、私たちが責任を取ればいいというものではない」と述べた。これまで政治責任は私にあると繰り返しながら、決して責任を取らなかった首相である。コロナ禍ではどんな責任を取るのだろう。 (豊田洋一)

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