和平案 エジプト・サウジ容認 アッバス議長反発「歴史のごみ箱に捨てる」

2020年1月30日 02時00分
 【カイロ=奥田哲平】トランプ米政権が公表したイスラエルとパレスチナの中東和平案を巡り、パレスチナ自治政府のアッバス議長は二十八日、「歴史のごみ箱に投げ捨てる」と受け入れを拒否した。ただ、これまでパレスチナ支持で一致していたサウジアラビアなどは、イスラエルとの対話に乗り出すよう促した。米政権はアラブ諸国と連携して受け入れ圧力を強めるとみられ、自治政府は厳しい立場に置かれそうだ。
 アッバス氏は「エルサレムやパレスチナの権利は売り物ではない」と強調、経済支援を引き換えにした妥協を拒否した。パレスチナ自治区の各地で抗議活動が始まり、イスラエル治安部隊と衝突した。
 サウジの外務省は声明で、米政権の「努力」に謝意を示し、アラブ首長国連邦(UAE)の在米大使館は「重要な出発点」と好意的に受け取った。イラン強硬策で米国と歩調を合わせるサウジなどにとって、パレスチナ問題の優先順位はかつてほど高くない。エジプト外務省も双方に対話再開を求め、明確に反対しなかった。
 和平案では、ヨルダンに隣接する国境一帯がイスラエルの主権下になると明記。ヨルダンは警戒心を示しており、サファディ外相は、イスラエルが占領政策を進めた一九六七年の第三次中東戦争以前の境界線に基づき、首都を東エルサレムとすることが和平への「唯一の道」と強調した。
 イスラエルと敵対するイラン外務省は「恥ずべき計画は失敗が運命づけられている」と非難。対米関係がぎくしゃくするトルコ外務省は「これは二国家共存案を台なしにし、パレスチナの領土をゆすり取る併合計画だ」と指摘した。

◆入植地の主権容認 グテレス氏が異議

 【ニューヨーク=赤川肇】国連のグテレス事務総長は二十八日、トランプ米大統領が発表した中東和平案について声明を出し、「二国家共存の解決策を巡る国連の立場は総会や安全保障理事会の関連決議で長年明確にされてきた」と指摘し、直接的な評価を避けつつ、イスラエルによるヨルダン川西岸のユダヤ人入植地の主権を一方的に認める内容に異議を唱えた。
 これまで国連は関連決議で、イスラエルに対し一九六七年の第三次中東戦争で占領した地域からの撤退を求め、入植活動の違法性を指摘。グテレス氏は声明で「国連は引き続き、決議と国際法、双方合意に基づく紛争解決の支援と、承認された六七年以前の境界線に基づく二国家共存の実現に関わる」と述べた。

◆イスラエル首相に大きな援護

<ハイファ大国家安全保障研究センターのダン・シュエフタン所長> 米政府として初めて現実を直視した実践的な提案と言える。仮に米国が政権交代しても民主党は和平案を支持するだろう。イスラエルはパレスチナ側の拒否は織り込み済みだ。国内的には汚職事件を抱えるネタニヤフ首相には大きな援護になる。(3月の)総選挙で最大野党「青と白」が勝利しても、安全保障政策はほぼ同じだ。和平案への支持は変わらない。

◆アッバス議長の後を見据えた

<パレスチナ自治政府元労働相のガッサン・ハティブ氏> アッバス議長がエルサレムを売り飛ばすことはあり得ない。和平案が4年間の交渉期間を設けているのは、アッバス氏の後を考えているからだ。和平案への抗議活動は発生するが、かつてのインティファーダ(反イスラエル闘争)にはならないだろう。今こそパレスチナ全勢力の結束が必要。対立する(自治政府主流派)ファタハと(ガザを実効支配する)ハマスの和解が進む可能性がある。

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