町追い込む地上イージス

2019年11月13日 02時00分
 日本海に面した山口県阿武町。白松博之さんの白菜畑は、防衛省が同県萩市に配備を計画する地対空迎撃システム「イージス・アショア」から約二百メートルのところにある。
 防衛省によると、レーダーから半径二百三十メートル以内は人体への影響があり、危険という。白松さんは「息子に白菜づくりを続けろとは言えない。農業をやめるしかない」。
 二十三年前の転落事故で車いすの生活を余儀なくされ、畑作は息子たちが引き継いだ。自身は農家民宿を立ち上げる一方、自然に恵まれた阿武町の魅力を都会の人に知ってもらう「お試し移住」の旗振り役を務めた。
 「阿武町で農業をしたい」。そんな相談は年に十数件あった。しかし、イージス・アショアの候補地と防衛省が発表した昨年六月以降の問い合わせはゼロだ。
 「強力なレーダー波(電磁波)を浴びるかもしれない町にだれも移住しようとは思わない。風評被害だけでも町は駄目になる」
 阿武町には発射する迎撃ミサイルの第一弾ロケットが落下する危険さえある。防衛省の担当課長は萩市議会で「絶対に陸上に落ちないとは言えないが、弾道ミサイルがわが国領域に直撃することと比較すると被害は比べものにならない」と発言した。多少の犠牲はやむを得ないというのだ。
 阿武町の住民を守れない防衛省に国民を守れるはずがない。 (半田滋)

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