韓国でも揺れる大学入試改革 「一般」重視?総合評価?

2019年12月4日 16時00分
 日本では2021年1月から実施される大学入学共通テストが揺れているが、お隣の韓国でも、チョ国(チョグク)前法相の娘の不正入学疑惑を契機に新しく打ち出された大学入試改革案で、論争が起きている。受験戦争が熾烈(しれつ)な韓国では、入試制度の変更がよくあり、そのたびに受験生や父母は対応に追われている。 (ソウル・境田未緒、写真も)
 「おいはアフリカにボランティアに行きました。親がお金をかけなかったらソウルの大学には受からなかったでしょうね」。ソウル市の女性会社員(52)は苦笑しながら六年前のおいの大学入学の顛末(てんまつ)を明かした。
 ボランティアは、日本の推薦入試に似た「随時募集」に必要な「スペック」の一つ。高校生だったチョ氏の娘が二週間のインターンで医学論文の執筆者に名を連ねたのも、スペックを増やすためだったとされる。
 韓国の大学入試は公立や私立に関係なく、随時募集と一般入試の「定時募集」がある。定時募集は主に、日本のセンター試験に近い大学修学能力試験(修能)で選考。修能当日、飛行機の離着陸も制限されるなど国を挙げての応援態勢が敷かれる。
 だが近年は随時募集の割合が増加。自己紹介書や高校教師が記入する「学生生活記録簿」でクラブ活動やボランティア、表彰歴といった成績以外を主にみる「総合評価選考」を拡大する大学が増えた。最難関大のソウル大は二〇年度、定員の八割を総合評価で選ぶ。
 総合評価選考は〇七年、塾費用の増加や学力偏重の問題に対応するため始まった。受験生や父母はスペックづくりに奔走するようになり、本来の狙いとは別に、親の社会的地位やスペックづくりを指導する入試コンサルタントを雇える家庭の生徒が有利に。一五年度からは海外ボランティアや大学での論文などの学外の活動は評価対象外になった。
 ただチョ氏の娘の疑惑が明らかになり、総合評価は選考基準が不透明で不公正だという批判が噴出した。文在寅(ムンジェイン)大統領は十月下旬に入試改革を表明。教育省は十一月二十八日、総合評価と論文選考の比率が高いソウルの十六大学の修能選考の割合を40%以上に引き上げる改革案を発表した。自己紹介書の廃止や記録簿の記述簡素化なども盛り込んだ。
 修能重視はひと昔前に戻った感があるが、檀国(タングク)大の李スジョン(イスジョン)准教授は「世論を受け入れて修能の割合を増やし、公正を期そうとした点は評価できる」と話す。大学で総合評価選考にたずさわった経験がある李氏は「短時間で大量の書類を見て評価しなければいけない。自己紹介書を本当は誰が書いたかも分からず、各高校の努力にも左右され、総合評価は客観的ではない」と指摘。より公正性を保つ改善が必要だと訴える。
 一方、「実践教育教師の会」広報担当でソウル郊外の高校に勤務する全大元(チョンデウォン)教諭は「修能が拡大すれば受験生は総合評価と修能、両方の準備が必要で大変になる」と批判。難関大が総合評価の比率を高めたのは「修能より総合評価で入った学生のほうが勉強に熱心だと分かったから」と解説する。修能は教育環境に恵まれたソウル中心部の生徒にこそ有利だという。
 歴代政権の人気取りにも利用されてきた韓国の大学入試制度改革。背景には、韓国の急成長を支えてきた高い教育熱がある。李氏は「教育熱は資源のない韓国に必要なもの。ただ卒業した大学によって採用を優遇せず、その人の実力を正確に評価する仕組みが必要」とも指摘する。

「学生簿に基づく総合評価は主観的だ」と指摘する李スジョン准教授=京畿道龍仁市の檀国大で

「現在のところは総合評価が最も望ましい入試制度」と話す全大元教諭=京畿道城南市の高校で

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