よく見ると…/あり得ない字/自分で書くと

2020年4月16日 02時00分

大橋可奈子(37)校閲部

◆よく見ると…

 校閲の仕事を「記事を読んで誤字脱字を直したり、事実関係を調べたりすること」と説明すると、「どんなところに間違いがあるのか」とよく聞かれる。間違いやすいポイントというのはあるのだが、この質問に一言で答えるのは難しい。
 ある原稿に「人口」と出てきた。この時、まず考えるのは同音異義で間違いやすい「人工」の変換ミスではないかということだ。文脈上、「人口」で間違いないな、と確認したものの何だか違和感が…。
 よく見ると、そこに書かれていたのは「人口」ではなく「入口」。「じんこう」と打って「入口」と変換されるはずがない。なぜ突然「いりぐち」と打ったのか理由は謎だが、間違いはこんな思わぬ形で潜んでいる。

◆あり得ない字

 「訂正 1回目のタイトル文字に誤りがありました」
 入社一年目、名古屋勤務時代に出してしまった訂正だ。名作シリーズとして連載が始まった坂口安吾『堕落論』の「論」の文字デザインが誤っていた。十三画目の横線の下にさらにもう一本横線が付いていたのだ。
 先輩から「(字形が似ている)『墜落論』になってないように気を付けろよ」と冗談で言われていたが、まさかあり得ない字が出てくるとは思ってもいなかった。このようなミスを防ぐにはどうするか。当時のデスクに教わった方法は「文字を上からなぞる」こと。以来、タイトルカット、手描きの漫画やイラストなどに出てくる文字は必ずなぞってチェックしている。
 以前連載していた四コマ漫画で「煮」の字になぜか草かんむりが付いていたことがあったのだが、この方法で紙面には載らずに済んだ。

◆自分で書くと

 実は前の「論」の字の話で「十三画目」とあるところを最初「十五画目」と書いていた。調べ直して間違っていることに気付き、慌てて直した。
 こうして自分で原稿を書くのは八年ぶり。人の原稿の校閲をしていると「何でこんなところ間違えるんだろう」と思うことも正直ある。なのに、いざ書いてみると自分のいいかげんさにあきれてしまう。
 一字一句漏らさず読み、調べる。それが、記者が書いた記事を正しく伝えるための手助けに少しでもなればうれしい。
<おおはし・かなこ> 東京都出身。2006年入社。主にニュース面を担当。仕事を終え、家でとりためたドラマを見ながらお酒を飲むのが楽しみ。休日は書道教室に通い、稽古に励む。

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