映像の街/新型コロナ/がれきの街

2020年3月20日 02時00分

梅村武史(54)足利支局

◆映像の街

 一昨年、十年ぶりに栃木県の足利支局に戻ってきた。足利市で旧知の人と再会する喜びもあったが、鬼籍に入られた方もいる。その一人が足利商工会議所専務だった中島粂雄さん。映画会社の元営業マンだった経験を生かし、映画文化をまちおこしに生かそうと奔走していた。居酒屋での映画談議は時間を忘れるほど楽しかった。口癖は「戦後の貧しい時代に育った。映画は青春の学校だった」。
 市ではいま、市長が旗振り役となって「映像のまち」を掲げる。市内の学校校舎や飲食店、工場などがロケ地となり、街角で著名な俳優の姿を見かけることもある。昨年は東京・渋谷のスクランブル交差点を再現した巨大屋外セットまでできた。
 映画「アルキメデスの大戦」「64 ロクヨン」、ドラマ「テセウスの船」「今日から俺は!!」など最近の人気作も足利ロケ。若い映画ファンが多数集う街になった。中島さんがまいた種がいま、花開いている。

◆新型コロナ

 猛威を振るう新型コロナウイルスの影響で足利市の学校も休校になり、子どもたちは行き場を失った。ここで張り切ったのはおじいちゃん、おばあちゃんたち。地方都市にとって高齢者は貴重な戦力だ。
 かわいい孫のため、と腕まくり。おいしい料理をつくり、遊び相手になり、勉強を手伝う。ただ、体力には限界がある。取材で知り合った七十代の男性は「有り余る子どものパワーについて行けない。疲れたよ」。終わりの見えない戦いが、各家庭で続いている。

◆がれきの街

 昨年十月の台風19号で約八千世帯が浸水した栃木県内最大の被災地、栃木市。同市出身の脚本家、八津弘幸さんが被災した市民の励ましに訪れたとき、印象深い出来事があった。
 ドラマ「半沢直樹」「陸王」などの脚本を手掛け、今秋放送のNHK連続テレビ小説「おちょやん」も担当する超売れっ子作家は、山積みのがれきが延々と続く故郷の街並みに深く落胆していた。
 市民に向けた色紙を頼まれた八津さん。しばらく考え込むと目が潤んできた。一気に筆を走らせる。「走り続けている限り負けじゃない!!」
 いつか「倍返し」のチャンスが来る、と信じたい。
<うめむら・たけし> 愛知県出身。1991年入社。栃木県南部担当。ギターを始めて2年。ムーミンの「おさびし山」をスナフキンのように演奏したい。

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