誰のための制度/残したおにぎり/あの日のコンビニ

2020年1月31日 02時00分

嶋村光希子(34)経済部記者

◆誰のための制度

 化粧品店を営む練馬区の六十代男性は、客から「カードで払う」と言われると身構える。十年以上前、偽造カードで高額品をまとめ買いされる被害にあったからだ。「現金以外こりごり」。しかし、消費税率引き上げとともに始まったキャッシュレス決済のポイント還元制度に、商店街全体で参加することになり、不安をこぼしていた。
 「カードに抵抗があって現金主義。いくら得でもわざわざ使わない」と話す八十代女性も。キャッシュレス決済は若者や都市部で浸透するも、高齢者らは取り残されがち。それに還元の費用や周知にかける税金は莫大(ばくだい)だ。一部の人だけ得するような制度には疑問が残る。

◆残したおにぎり

 仕事の合間に食べようとかばんに入れたおにぎり。タイミングを失い、さらに忘れてしまって結局食べられず。処分する時に罪悪感が広がった。
 まだ食べられるのに捨てられる「食品ロス」を追っている。食品や飲料メーカーは賞味期限を延長するなど対策は広がるも、廃棄の半分近くは家庭から。ロスが減らないのは「日本人は食品に新鮮さや安全性を過度に求めるから」との専門家の指摘もある。食品を買いすぎない、外食では残さない。できることから始めたい。

◆あの日のコンビニ

 故郷が阪神大震災に見舞われて二十五年がたった。小学生だった私は被災直後、食べ物を探し求めて亀裂の激しい道を母と手を取り歩いた。見慣れた家やビルがつぶれ、店は軒並み閉まる中、コンビニエンスストアには人だかりができていた。商品がほとんどなくなった棚から菓子パンを手に取り、貴重な食料のありがたさをかみしめた。
 昨年はコンビニをめぐる問題が噴出した。人手不足は深刻で、加盟店主や従業員は二十四時間、年中無休の「社会インフラ」の名の下、期待や重荷を一身に背負う。都内の男性店主は「開店してからの十二年間、一日も休めたことがない」と明かし、心身ともに疲弊する。
 地震や台風など近年の大きな災害でも休みなく店を開け、今年の元日でも休業できた店は全国でわずか。コンビニのビジネスモデルは彼らの過酷な労働で成り立っている-。そう思うとあの時のパンの味が複雑にも思えてくる。
<しまむら・みきこ> 兵庫県出身。2009年入社。昨年から流通担当。東京暮らしは学生時代以来で、急速なデジタル化に戸惑う。都会に埋もれた歴史を刻む渋い酒場と銭湯を探すのが楽しみ。

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