1課のバッジ/白石被告の欲/役割

2020年3月6日 02時00分

西川正志(34)社会部記者

◆1課のバッジ

 警視庁の中でも花形部署と呼ばれる捜査一課の課員だけが着用するバッジがある。数字の「1」の両側に「S」を配置した丸バッジだ。
 デザインの意味をネットで調べると「search 1 select(選ばれし捜査一課員)」とする記事が多数ある。
 だが、ある警視庁幹部によると、本当は「search 1 service」。serviceは「奉仕する」という意味だ。記者も長年、「選ばれし…」という意味だと思い、「エリート意識を感じるバッジだな」なんて思っていたのが恥ずかしい。一課員の胸には被害者の無念を晴らすという奉仕の思いが輝いている。

◆白石被告の欲

 神奈川県座間市で九人が殺害された事件の発覚から二年を迎えようとしていた昨年十月、強盗強制性交殺人罪などで起訴された白石隆浩被告と面会した。
 白石被告は「欲を満たすためにやった」と軽口をたたくように動機を語った。自由がないことへの後悔は口にするが、被害者らへの謝罪はなく、反省した様子はかけらもなかった。
 拘置所で筋トレをしているという白石被告は「どうすれば前腕鍛えられますか」と聞いてきた。裁判でTシャツ姿を見られることを意識して「たくましい腕にしたい」という。
 欲のために九人を殺害し、今も外見をよく見せようとする欲を隠そうともしない姿勢に、心がざわついた。「拘置所で前腕を鍛えるのは難しいですね」。自由がない現実を少しでも突きつけたくなった。

◆役割

 「打者なら誰もが本塁打を狙いたい。でも自分の役割は違うのでそれを求めちゃいけない」。さいたま支局で高校野球を担当した二〇一六年夏、名門花咲徳栄で二年生ながら一番打者を任された男は冷静に自分を見つめていた。
 翌年には主将となり、甲子園で優勝。だが今年一月、強盗致傷容疑などで千葉県警に逮捕された。
 犯罪は自分の利益だけを優先した卑劣な行為だ。「派手なプレーはいらない」とチームプレーを優先した彼がなぜ強盗を犯したのか。引退後の彼の役割が強盗だったのは悲しい。自分を見つめ直し、本当の役割を見つけてほしい。
<にしかわ・まさし> 石川県出身。2008年入社。警視庁捜査1課担当。趣味は筋トレ。2月から減量を始めて4キロ落としたが、すでにオートミールと鶏胸肉の減量食に飽きてしまった。

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