そこにいる人々/都会の衝撃/誰のための祭典

2019年9月20日 02時00分

原田遼(37)社会部記者

◆そこにいる人々

 参院選に合わせ、貸倉庫に隠れるように住む非正規労働者の実態を記事にした。低賃金の派遣労働に対策を打たない政権を批判する内容だったが、ある自民党議員から「深刻な問題だ」と面会の申し出があった。
 「料金は一カ月いくら」「なぜアパートに住めないのか」「視察してみたい」と熱心に聞いてきた。興味を持ってくれたことがうれしい半面、「ネットカフェ難民」という言葉が生まれて十年以上たつのに、労働者たちの境遇が知られていないことに憤りが募った。
 「自民党はもっと困窮者に目を向けないといけない」。議員の言葉が実現してくれることを願う。

◆都会の衝撃

 東京五輪・パラリンピックのテスト大会で東京湾の大腸菌量が基準値を超え、東京の下水事情が話題になった。大雨が降ると下水処理が追いつかず、生活排水が河川に直接放流される。
 現場を見ようと、ゲリラ豪雨発生とともに、あらかじめ調べておいた地下鉄・江戸川橋付近の神田川にダッシュ。到着の数分後、ごう音とともに護岸の放出口から滝のように茶色の水が流れ出した。強烈なウンチ臭が漂い、通行人がみんな鼻をつまむ。「何、この臭い」。女性の悲鳴が橋に響いた。
 トライアスロンなどで東京湾を泳ぐ選手は気の毒だが、住民は何十年も悪臭に悩まされているだろう。大都市の闇を見た。

◆誰のための祭典

 都内で趣味のフットサルをしていた週末、対戦チームとの雑談で、利用施設の話題になった。「どこのコートも予約しづらく、転々としてますよ」。相手は苦笑いで嘆いていた。
 私たちも相手も、もともとは明治神宮外苑のコートを使っていた。草野球場やテニス場もある外苑は、いつも老若男女でにぎわっていた。しかし東京五輪時に新国立競技場のサブグラウンドとして貸すということで、今年三月いっぱいで休業。都内の施設は少なく、多くの利用者が「難民」になったことは想像に難くない。
 スポーツの祭典により、スポーツの場が奪われる皮肉。外苑側に取材を申し込むと、「批判を浴びる可能性がある」と拒否された。鉄道も道路も、何もかもが五輪最優先。市民のボヤキくらい受け止めてくれても…。
<原田遼(はらだ・りょう)(37)> 埼玉県出身。2005年入社。文部科学省や東京五輪を担当。サッカー王国ブラジルに憧れ、食事や文化も好むが、長年の趣味のフットサルは一向にプレーが上達せず。

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