9月入学に与党慎重論 市町村長の8割も「慎重・反対」

2020年5月27日 08時02分
 新型コロナウイルスの影響による休校の長期化で政府が導入の可否を検討している九月入学制に関し、与党内で慎重論が強まっている。自民党議員からは、拙速な議論を避けるよう求める声が相次ぎ、公明党もコロナ対策と切り離した検討を求めている。導入に前向きだった安倍晋三首相も発言をトーンダウンさせた。 (坂田奈央、中根政人)
 「今、結論を出すような状況ではない」
 自民党が二十五日に開いた秋季入学制度検討ワーキングチーム(WT)に、オンラインで出席した全国市長会の立谷秀清会長(福島県相馬市長)が、九月入学制導入に慎重な意見を唱えると、集まった百人以上の議員から拍手が湧いた。
 WTで全国市長会と全国町村会は、いずれも組織内調査で「慎重・反対」が八割を占めたと報告した。出席議員も「学習の遅れ解消や受験の不安を取り除くことに議論を集中すべきだ」などと指摘し、早期導入を求める意見は出なかった。
 WT座長の柴山昌彦前文部科学相は記者団に「現場を預かる市町村長の意見は重い」と語った。二十二日には、自民党の中堅・若手議員が九月入学に反対する提言を党幹部に提出した。別の文科相経験者は「慎重にすべきだと政府に提言するしかない」と漏らした。
 公明党の山口那津男代表も性急な議論には反対姿勢だ。二十六日の記者会見で「時間をかけた十分な議論が必要だ。(コロナ対策とは)切り離した検討を求めたい」と訴えた。
 政府内で九月入学制の議論が始まったきっかけは、全国知事会で導入を求める声が相次ぎ、四月末に国民的な議論をするよう提案したことだ。第一次安倍政権の二〇〇六年に大学の九月入学の検討を主導した首相も、こうした声に乗り国会で前向きな姿勢を示した。
 だが、導入には就職など社会システムの大幅な変更を伴うため、与党内の慎重論が拡大。各種世論調査で内閣支持率が急落したこともあり、首相も二十五日の記者会見で「慎重に検討したい。拙速は避けなければならない」と発言を弱めた。政府高官も「当初とは状況が変わっている」と風向きの変化を認めた。

◆本当に今ですか?教育関係者も「待った」

 教育や子どもの貧困問題の専門家らが二十六日、文部科学省で記者会見し=写真、「本当に今ですか?」と拙速な移行を危惧する考えを表明した。
 日本大の末冨芳(すえとみかおり)教授は「議論自体は重要」としながらも「(新型コロナ感染の)混乱状況での拙速な移行を懸念する」と強調。政策目的が学びの保障なのか、グローバル化なのか「完全に見失われている」とした。日本教育学会の試算でコストが六兆〜七兆円に上るとし、待機児童の激増、保育士や教員不足で「本当に子どもや若者のためになるのか」と指摘した。
 NPO法人キッズドアの渡辺由美子理事長は、困窮する子育て家庭の声を紹介し、「子どもが飢えている時に、九月入学を議論する余裕はない」と強調。九月入学のコストは貧困対策に生かすべきだと訴えた。
 オンラインのインターナショナルスクールを展開する松田悠介さんは「九月入学になっても奨学金の拡充や英語教育の抜本的改革がない限り、海外への留学生が増えるとは考えにくい」と述べた。
 メンバーは「#9月入学本当に今ですか?」とのホームページで署名活動を行い、今後、国に提出するとしている。 (土門哲雄)

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