「テラハ」木村花さん急死…SNS炎上からどう守る?

2020年5月27日 08時06分
亡くなった木村花さん=3月8日、東京都文京区で(ゲッティ・共同)

亡くなった木村花さん=3月8日、東京都文京区で(ゲッティ・共同)

  • 亡くなった木村花さん=3月8日、東京都文京区で(ゲッティ・共同)

 フジテレビの人気番組「テラスハウス」に出演していた女子プロレスラー木村花さん(22)が23日、東京都内の自宅マンションで急死した。遺書のようなメモが見つかり、警視庁は自殺とみている。木村さんは番組での言動を巡り、自身の会員制交流サイト(SNS)で多数の誹謗(ひぼう)中傷を受けたと明かしていた。専門家は「日本は被害者を守るための法整備が不十分」と指摘する。 (安藤恭子)
 「毎日100件近く率直な意見。傷付いたのは否定できなかったから。死ね、気持ち悪い、消えろ、今までずっと私が1番私に思ってました。お母さん産んでくれてありがとう。愛されたかった人生でした」
 死の直前、木村さんはツイッターにこうつづった。インスタグラムにも「愛してる、楽しく長生きしてね。ごめんね」と、猫と一緒の写真を投稿。捜査関係者によると、木村さんは一人暮らしだった。
 木村さんはインドネシア人の父と元プロレスラーの母響子さんの間に生まれ、十八歳でプロレスデビューした。テラスハウスは、シェアハウスで共同生活する男女六人が恋や仕事に悩む日常を描き、木村さんは昨年九月から出演。木村さんの死を受けフジテレビは放送を休止し、世界各国に先行配信していた「ネットフリックス」も六月二日までの配信休止を発表した。
 木村さんへの誹謗中傷は、三月末から強まった。同居男性が自分の衣類と一緒にプロレスの衣装を洗濯機で乾燥させ縮ませてしまい、木村さんが激怒する「コスチューム事件」(番組サイト)が配信。木村さんのSNSに「お前が早くいなくなればみんな幸せ」などの書き込みが相次いだ。
 テレビプロデューサーの鎮目(しずめ)博道・上智大非常勤講師はテラスハウスについて「『恋愛リアリティーショー』と呼ばれる番組の一つ。中高生から若年女性が主な視聴層で、芽生えた恋心や嫉妬、リアルな恋愛の過程に共感する。SNSと相性が良く、発信力の強い子がキャスティングされる。業界的に数少ない若者受けするコンテンツとして重宝されてきた」と説明する。
 一方で鎮目氏は「『一切台本なし』をうたいつつ、映像の順番を変えるなど演出でキャラを誇張し、あおっていくのがリアリティーショーの構造的な危うさ」と話す。人間関係も「善」と「悪」で単純化する傾向があり、プロレスでヒール(悪役)として活躍していた木村さんは「嫌な女」の役割を求められたとみる。「番組制作者は、若くて未成熟な出演者を丸ごと面倒見る覚悟が必要なのに、守らなかった責任がある」
 昨年十一月には韓国の女性アイドルグループ「KARA」の元メンバー、ハラさんがネット上の誹謗中傷を苦に命を絶った。性暴力を告発したジャーナリストの伊藤詩織さんがネットでのバッシングに身の危険を感じ、英国に転居したと明かすなど同種の被害は後を絶たない。
 SNSで誹謗中傷されても、警察が脅迫容疑などで立件するのはまれ。発信者を特定する情報開示手続きも、時間と費用がかかる民事訴訟を起こすのが前提で、被害者の負担は大きい。SNSの被害に詳しい伊藤和子弁護士は「匿名の集団による言葉の暴力は人権侵害。加害者はもちろん、悪質な投稿を削除してこなかったツイッター社など事業者の責任も問われるべきだ」と批判する。
 高市早苗総務相は二十六日、悪意あるネット上の投稿抑止のため制度改正を検討する意向を示した。伊藤氏は「欧州各国は、ヘイトスピーチや差別の書き込みを放置する事業者に重い罰金を科している。安心できるSNS空間をつくるため、社会全体で議論を深めてほしい」と述べた。

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