「給付金、ギャンブルに使われる」 依存症の家族「個人支給にして」

2020年5月27日 08時07分

埼玉県の店名公表後も営業を続けるパチンコ店で、開店前に並ぶ人たち=一部画像処理

 新型コロナウイルス対策で国が一人当たり十万円を支給する「特別定額給付金」が、世帯主の口座へまとめて振り込まれることに、ギャンブル依存症者の家族らが不安を抱えている。世帯主が依存症の場合、家族分の給付金もパチンコなどへつぎ込んだり、依存症から抜け出そうとしていた人がまとまったお金を手にして再発したりする可能性が指摘されるからだ。「個人支給にする配慮をしてほしかった」と訴えている。 (中里宏)

▼就労先なく

 緊急事態宣言後、休業を求められても営業を続けるパチンコ店の前に行列をつくる人たちの姿が各地で見られた。「ギャンブル依存症は、世界保健機関(WHO)が認めた病気。県境を越えてまで営業店に行く人の多くはギャンブル依存症の可能性がある。家族は苦しんでいるのでは」。埼玉県に住む五十代の女性は心を痛める。
 この女性の三男は、高校を卒業して就職後、競馬とパチンコにのめり込み、消費者金融からの借金は数百万円に上った。昨年一月、依存症の更生施設に入所。回復プログラムの第一段階を終え、自立のための就労プログラムへ移行するはずだったが、コロナ禍で就労先が見つからず、先に進めない状態という。

▼別居し転出届

 公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」(東京)は今月六〜七日、依存症から回復した当事者や家族を対象に、アンケートを実施。当事者へ「回復する前に地域のパチンコ店が自粛していたらどうしたか」と尋ねると、有効回答二百三人のうち、六割の百二十三人が「都道府県をまたいででも(営業店に)出かけた」と答えた。
 回復前に給付金を受け取っていた場合の使い道は、複数回答可で最も多かったのが「自分の分だけギャンブルに使ったと思う」の47%。「家族の分もギャンブルに…」は23%に上った。
 世帯主がギャンブラーという家族への質問では、約20%が給付金を家族の分も含めギャンブルに使われる不安やあきらめを感じていた。家族分を使わせないため、別居し転出届を出したと回答した人もいた。
 「考える会」の田中紀子代表は「給付金で依存症が再発すれば新たな借金につながり、家族が苦しむ。家庭内に問題を抱え、困っている人について取り組もうという姿勢が、政府に見えない」と批判する。

▼DV被害者も

 特別定額給付金を世帯主に限定したことについては、ドメスティックバイオレンス(DV)被害者の支援活動に当たる人たちも批判の声を上げる。
 女性相談ネット埼玉の相談員の女性(71)は「妻のパート収入まで取り上げ、経済的に支配するのがDVの典型例。支配されている妻は『私にもください』とは言えない。支配から逃げようと思ってもお金がないのが現実」と話す。
 DV被害者の自立就労支援をしている野田静枝さん(72)も「DV夫には、お金を妻にあげるという発想がない。給付金は個人申請にしてほしかった。それがDV被害者が逃げ出す資金になるかもしれない。日本は子ども手当も含めあらゆるものが世帯主対象で、『家父長制』そのもの。家制度が現代に多くの弊害を生んでいる」と指摘した。

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 ギャンブル依存症に関する相談は「考える会」の相談専用電話=電070(4501)9625=へ。

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